【新入社員のための鉄鋼基礎講座(2)】販売形態「ヒモ付き、店売り、準ヒモ」の3種類

 鉄鋼メーカーによって販売の向け先はさまざまだが、日本全体でみると国内で生産される鉄鋼製品のうち、6~7割が国内向けに販売され、3~4割が海外向けに(直接)輸出されている。国内向けに販売される鉄鋼製品を需要家が加工して最終製品をつくり、海外向けに輸出するケースもある。これは間接輸出と呼ばれる。

 鉄鋼製品の国内流通販売ルートには、大きく分けて二つの取引形態がある。

 一つは紐付き(ヒモ付き)販売で、もう一つは店売り販売だ。簡単に言うと、売り先が特定のユーザーにヒモ付いているかどうか、で分けている。

 ヒモ付き契約によって販売されるヒモ付き販売は、需要家(ユーザー)の注文内容(たとえば価格、数量、品質)が鉄鋼メーカーに通じているもの。鉄鋼メーカーは、特定の需要家向けの鋼材だと認識し、鋼材を生産して販売する。鉄鋼メーカーの立場からすると、鋼材を使うユーザーの顔が見える取引だと言える。

 ヒモ付き契約の場合、販売価格や数量などは、鉄鋼メーカーと個別ユーザーと直接、かつ個別に決める。自動車、造船、電機メーカー向けなどがヒモ付き販売先の代表例と言える。製造業向けはヒモ付き取引が多いのが特徴だが、建設分野でもヒモ付き取引はある。建設分野でも、最近はヒモ付き的な取引が増えている。

 鉄鋼メーカーとユーザーとの間に、一般的には商社が入る。商社はデリバリー(出荷・納入)業務や決済業務などを受け持っている。

 一方の店売り販売は、最終需要家を特定することなく、鉄鋼メーカーが商社や問屋に対して鋼材を売り切る取引をいう。商社や問屋は、購入した鋼材を自己の責任とリスクにおいて在庫し、市況などを勘案しながら自らの営業努力で販売する。流通企業の立場から「自販」という呼び方をする。

 店売り取引の中に「仲間売り取引」というものがある。千葉県にある日本最大の鉄鋼団地である浦安鉄鋼団地が象徴的だが、流通企業同士が鋼材を融通し合ったりする取引、つまり販売業者間の取引を仲間取引、あるいは仲間売りという。

 仲間取引における取引価格、相場を「鋼材市況」「市中価格」と呼ぶ。鉄鋼新聞の紙面に毎日掲載している「仲間相場」は、この価格の動きを示している。

 また、「準ヒモ付き取引」と呼ばれる取引もある。「準ヒモ」と省略される。たとえば、見かけ上はコイルセンター以降の需要家が特定されていない店売りの形態にみえるが、実際にはコイルセンターなどが継続的に取引している特定の需要家向けに販売されているケース、などをいう。(一柳 朋紀)

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