特集「女たちの原発事故7年」(2)

桃吐かれたこと原点に 正しい福島伝えたい

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高橋宏一郎

共同通信記者

高橋宏一郎

共同通信記者

1965年生まれ。社会部出身。東日本大震災後の2012年から福島支局長、仙台編集部長として震災原発事故報道に携わった。

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出演するFM番組で福島への思いを語る上石美咲さん=1月、福島県郡山市

 福島大4年の上石美咲(あげいし・みさき)さん(21)は、福島産の桃をPRするミスピーチキャンペーンクルーを2015年から2年間務めた。

 横浜市の百貨店で活動していた時のこと。試食した女性客が「おいしいねえ。どこの桃?」と話し掛けてきた。

 うれしくなって「福島です」と弾んだ声で答えた。

 その瞬間、女性客は口から桃を床に吐き出して立ち去ったのだ。

 この嫌な体験が、彼女の原点だ。

 福島の現状を正しく知り、全国の人に伝えなければと考えるようになった。

 つてを頼って東京電力福島第1原発に4回、第2原発には3回、見学で入った。

 現状は。この先どうなるのか。

 廃炉に向けた作業の専門的な話も東電の社員にどんどん尋ねる。

 ふくしまFM(福島県郡山市)の番組「伝えるラジオ~福島リアル」にパーソナリティーとして月1回出演している。

 被災者や避難者、復興活動に取り組む人、廃炉作業を指揮する東電幹部らにインタビューした内容を録音で紹介しながら、自身の思いも語っている。

 東日本大震災と原発事故が起きた時は、郡山市の中学2年生だった。

 合唱部に所属していた。

 避難所の慰問で「ふるさと」を歌うと、お年寄りたちが「分かれて県外に避難した孫を思い出す」と泣きながら聴いてくれた。

 ありがとうと感謝され、逆にパワーをもらった気がした。

 高校時代は企業の復興支援プロジェクトで渡米し、福島のことを海外の人たちに伝える活動にも取り組んだ。

 地元銀行に勤める父の転勤で、幼いころから、太平洋沿いの浜通り、内陸部の中通り、山あいの会津と県内各地に住んだ。

 どの土地も大好きだと、自信を持って言える。

 でも原発事故以降、福島は誤解され、差別や偏見の対象になりやすい。

 自分がいろいろと知識を増やし、福島のいいことも悪いこともきちんと話せるようになりたいと思っている。

 FM番組の取材やプライベートで、県内各地の観光地にも積極的に足を運び、さまざまな人に会って話を聞いている。

 「震災と原発事故があったからこそ、ふるさとを振り返り、人の心に敏感でありたいと思うようになりました」

 今は就職活動の真っ最中だ。

 将来は福島の食をPRできるような仕事に就ければと思う。

 全国、全世界の人々が、福島のことを正しく知り、忘れないでいてほしい。

 もっともっと努力を積み重ねていこう。そう自らを鼓舞している。(共同通信=原子力報道室・高橋宏一郎)

原子炉のすぐ下を見学し、原発の仕組みを学ぶ上石美咲さん=1月、東京電力福島第2原発
福島県郡山市、福島第1、第2原発