【ムーディーズがレポート】EV化など車業界の大変化で「鉄鋼、他素材との競争激化」

 格付け会社のムーディーズ・ジャパンは、代替燃料車の拡大は日本の複数の業界に対して信用上に関わる課題をもたらし、中でも巨大な自動車業界、加えて鉄鋼業界や石油精製業界等が大きく影響を受ける、とのレポートをまとめた。

 今後10年の間、日本の自動車メーカーおよび関連業界は、代替燃料車技術に多額の先行投資を行うとみられるが、「これには代替燃料車の普及が予想通り進まないというリスクが伴う」とムーディーズでは見ている。

 加えて、自動車の電動化とそれに伴うガソリン消費の減少は「自動車、鉄鋼および石油精製業界に直接的な影響を与えるだけでなく、重要な税収減の縮小にもつながり、道路建設や公共事業の財源にも影響を与える」としている。

 ムーディーズは、電気自動車および他の代替燃料車(ハイブリッド車、プラグイン・ハイブリッド車、燃料電池車等)が世界の新車販売台数に占める比率は、2017年の5%未満から2030年までに約35%に上昇すると予想している。

 また、市場拡大の予測に不確実性が伴うことそのものが最大のリスクの一つであり、これは自動車メーカーがどのような戦略をとれば競争力と収益性を確実に維持できるかを見極めることを非常に困難にしている、という。

 自動車メーカーは、代替燃料車の拡大に必要な研究開発費と設備投資の増加により、既に低い利益率が一層圧迫される可能性がある。また、新規メーカーの参入で業界内の競争が激化し、同時に、新たな技術革新に対応するため、従来のコア事業分野の外に踏み出し、新たなビジネスモデルを構築する必要にも迫られる可能性があるとムーディーズは指摘している。

 自動車メーカーが電池重量を相殺するため他の素材による軽量化を図るなか、同様に鉄鋼メーカーも、アルミニウムやカーボンファイバーとの競争が激化することが予想される、との見方を示す。

 一方で「代替燃料車の拡大からプラスの影響を受けるセクターもある」とし「エレクトロニクス、化学および電力業界の各企業にとっては、新たな需要創出の機会となるだろう」としている。

 特に「リチウムイオン電池用の部材を製造する化学会社は需要拡大の恩恵を受ける。また、自動車の充電がもたらす電力需要の増加は、人口減少、省エネルギーおよび電力市場自由化を背景に起きている電力需要の減少を一部相殺する要因となるだろう」とみている。

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