【新入社員のための鉄鋼基礎講座(4)】鉄鋼業は物流業の顔を持つ

 鉄鋼業は物流業の顔を持つともいわれる。鉄は重くてかさばるので、運ぶのが大変。コストもかかる。いかに安全に、コストを抑えて、キズをつけずに運ぶかは重要だ。特に中に穴が開いているパイプ(鋼管)は、空気を運ぶ鋼材とも言われる。

 今はトラック運転手などの人手不足が深刻だ。引っ越し業者の手配がつかずに苦労をした新入社員の方もいるのではないか。

 鋼材は陸(トレーラー)で運ぶ陸送と、船で運ぶ海送の主に2種類がある。物流コストの上昇はアマゾンやヤマト運輸など運送業の問題にとどまらず、鉄鋼業にも大きく関わっている。なお鉄鋼メーカーの生産出荷状況などによっては、まれに飛行機で鋼材を運ぶこともある。これはコスト度外視で安定供給を果たすためだが、「いかに運ぶか」は鉄鋼業にとって大事なテーマであることを知っておく必要がある。

 日本鉄鋼業の国際競争力の源泉の一つは、臨海製鉄所を構えて良好な港を有していること。世界中の良質な資源を、海上輸送により臨海製鉄所に大型船舶で運び入れることができるのがコスト上の強みだ。さらに、生産した鋼材を港からすぐに出荷(輸出)することができる。

 たとえば、日本から米国の西海岸(カリフォルニア州)などに鋼材が輸出されているが、米国の中部で生産された鋼材を西海岸に陸上で運ぶよりも、日本から海上輸送したほうが安いことも多い。それだけコスト競争力があるのだ。

 日本の場合、鋼材の価格を考える場合には、需要家のもとに届けるところの物流費まで含めて考える必要がある。国内の鋼材販売契約においては、「持ち込み渡し」(鉄鋼メーカーが、買い手の指定する場所に鋼材を持ち込んで渡す契約)が主流になっているからだ。

 これに対し、中国などでは「置き場渡し」(鉄鋼メーカーの置き場に置いておき、買い手が取りに来る契約)が主流となっている。メーカーが造ったものを「取りに来なさい」と言わんばかりで、中国らしいとも言える。

 なお、日本国内の鉄鋼取引において、鉄鋼メーカーから需要家に鋼材が届けられる物流のルートは取引形態によってさまざまだ。品種や地域によっても違いがある。

 例えば、異形棒鋼の場合は「直送」が多くなっているが、これは鉄筋用途のものを工事現場などに直接運ぶケースことが多いからだ。

 鋼板の場合、途中に加工業者を経由するケースが多くみられる。薄板の場合、約70%がコイルセンターと呼ばれる流通加工企業で加工され、その後に需要家

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