「リレーコラム」今秋から「Vリーグ」に バレーボールの活性化につながるか

JT―久光製薬 第2セット、スパイクを決める久光製薬・岩坂=東京体育館

 3月17、18日、バレーボールのプレミアリーグは決勝第2戦が行われ、男子はパナソニック、女子は久光製薬の優勝で幕を閉じた。

 パナソニックは昨年末の全日本選手権に続いての2冠を達成、久光製薬はプレーオフも含めて今リーグは全30戦で29勝をマークした。ともに優勝にふさわしいチームだった。

 この2チームが「プレミアリーグ」として行われるリーグの最後の優勝チームとなったことは、あまり知られていない。今秋から「Vリーグ」として新たなリーグが始まるからだ。

 しかし、バスケットボールのBリーグが開幕したときのような盛り上がりも高揚感も、そこにはない。

 プレミアリーグ閉幕から1週間後。3月24日の「Vリーグ」参加チームの発表記者会見に全国紙の記者はいなかった。スポーツ紙でもいない社があった。それが「Vリーグ」の今の注目度を物語っている。

 2016年9月に新リーグ構想を発表した際には、大きな注目を浴びていた。これまでの形態を劇的に変え、チームの運営は企業から独立した法人へ。試合は完全ホームアンドアウェーに。そしてチーム名にはホームタウンの名称を入れることを義務づけるとしていた。

 大きく変革することを掲げ、それに我々報道陣やファンも期待した。しかし、それらは紆余曲折を経てほとんどがなくなってしまった。

 独立した法人になることは求めず、試合も完全ホームアンドアウェーは実現しなかった。現時点で、チーム名に新たにホームタウンの名称を入れたチームも皆無だった。

 もちろん変更点はある。これまではリーグを運営する日本バレーボールリーグ機構(Vリーグ機構)と各都道府県協会が持っていた開催権は本拠地チームに譲渡され、ホームゲームが現行よりも増える。

 ホームゲームでは、ホームのチームが試合以外の部分での運営を全て行うため、イベントなどは自由にできるようになった。チケット収入などもチームに入るように変更された。しかし、完全ホームアンドアウェーではなく、1会場で2試合(ホームゲームと、ホームチームが関係しない試合が1試合ずつ)行われることの方が多くなる見込みだ。

 他の変更点は、チーム数がこれまでの男女各8から、男子は10、女子は11になることと、これまでの外国人枠に加え、アジア枠として男子は東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国、韓国、台湾の選手、女子はASEANの選手が認められるようになったことぐらいだろう。

 これらを見ると、「新リーグ」というよりも、「現行リーグのマイナーチェンジ」の方がしっくり来る。批判するつもりはない。ただ、率直な感想としてそう思った。事実、「中途半端」と言う選手もいた。

 何はともあれ、変わろうとして一歩を踏み出したのは事実である。その一歩は、同じ室内競技のバスケットボールに比べると極めて小さな一歩かもしれない。

 しかし、のちに大きな飛躍につながる一歩になるかもしれない。

 日本バレーボール協会会長を兼務するVリーグ機構の嶋岡健治会長は「地元と一緒にチームが活性化してほしい。最終的には完全にホームアンドアウェーにしたい」とし、「お客さんで満杯になるような体育館で試合をやってもらいたい」と目標を掲げる。

 1990年代には、Jリーグの後を追うようにプロ化を目指したが断念した経緯もある。その二の舞になりはしないか。

 「Vリーグ」はバレーボールの活性化につながるのか。一歩を踏み出した先がどこに向かうのか、行く末を注視していきたい。

柄谷 雅紀(からや・まさき)プロフィル

全国紙の社会部で事件・事故取材などを経て、2013年に共同通信入社。翌年から大阪運動部でプロ野球、Jリーグなどをカバーし、16年から本社運動部でバレーボールやスキーを担当。平昌五輪では主にスキーを取材。筑波大時代は男子バレーボール部でプレーした。大阪府出身。

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