【新入社員のための鉄鋼基礎講座(5)】鋼材在庫、薄板3品の適正水準は400万トン

 鋼材の物流過程において、鉄鋼メーカー、問屋、ユーザーなどがそれぞれ鋼材在庫を保有している。鋼材需給を反映して、在庫数量は増えたり減ったりする。

 需要が強い時、つまりユーザーの活動水準が高くて注文が多い時は鋼材が次々と出荷されるので、鋼材在庫は減っていく。一方で需要がさえない時、つまり鋼材の荷動きが悪い時には鋼材が滞留して在庫が増える傾向となる。

 実際の需要ではなく、「仮需(かりじゅ)」と呼ばれる需要が出た場合に、在庫が一時的に増えることがある。これは、鋼材価格がこれから上がると予想した流通企業やユーザーが、鋼材を値上がり前の価格で早めに、そして多めに手当てしようとする動きをいう。

 国内の鋼材在庫数量を知るにはいくつかの統計があるが、特に注目度が高いのが薄板3品在庫と呼ばれる統計だ。これは熱延鋼板、冷延鋼板、表面処理鋼板(めっき鋼板)の薄板3品につき、(1)鉄鋼メーカー(2)問屋(3)コイルセンターの3者が保有している在庫量を、全国ベースで毎月末の時点で取りまとめた数字となっており、鉄鋼新聞などで知ることができる。

 一つの目安として言えば、薄板3品在庫の適正水準は400万トン程度といわれている。これを下回る時は需給がタイトになっており、これを上回る時は需給が緩んでいるとみるのが一般的だ。

 ただ、ユーザーは年末年始や盆休みの時などに工場が休みとなって鋼材の受け入れを止めるケースが多い。そうした時期には、鉄鋼メーカーが生産した鋼材の出荷が滞って在庫が一時的に増える。こうした「季節要因」「季節パターン」などもあるほか、最近は悪天候(荒天)で出荷が滞ることも以前より増えている。一概に表面上の数字だけで需給を判断できないので注意が必要だ。

 また輸入材の動向も国内在庫水準に影響を与える。

 輸入材とは、海外の鉄鋼メーカーが生産して日本向けに輸出するものをいう。輸入材の数量や価格は、日本国内の鋼材需給に影響を与える。日本国内に流通する鋼材の1割近くが輸入材になっている。

 輸入材は、韓国・中国・台湾の3カ国で全体の99%を占める。個別メーカーでは韓国のポスコ、台湾のCSC(中国鋼鉄)が日本向けの2大ソースだ。その2社の対日販売価格は、国内鋼材市況にも影響を与えるため、注目されている。(一柳 朋紀)

© 株式会社鉄鋼新聞社