11日(水)、日本サッカー協会は日本代表の新監督に就任した西野朗氏の記者会見を実施した。
今回は、この日の会見における全文を文字起こしする。かなりのボリュームになるため、三部に分けてお伝えしよう。
また質問内容はできるだけ簡素化し、西野監督の発言についてはできる限り口語のまま記すこととする。
田嶋 幸三(日本サッカー協会 会長)
「このように多くの方に集まっていただき、誠にありがとうございます。
サムライブルー、日本代表の新監督として西野朗さん、そして皆さんにお配りしているお手元の資料にあるように、コーチングスタッフ。
このメンバーを本日の理事会で報告させていただきました。これを改めて皆さんにお伝えしたいと思います。
これから西野監督の下で日本代表チームがスタートするわけですが、先日もお話した通り、これまで日本サッカー界が蓄積してきた全ての英知を結集して、オールジャパンの体制でワールドカップに臨む日本代表チームをサポートしていきたいと思います。
皆さんも是非、西野監督を支えていただければと思います。宜しくお願いします」
西野 朗(日本代表 監督)
「皆さん、こんにちは。
この度はハリルホジッチ監督の後任として日本代表監督を受けることにしました。
本来であれば技術委員長の立場として日本代表チーム、監督をはじめスタッフを支える、サポートしていくポジションでありますから…ただ2年前に就任して、精一杯代表チーム、監督へのサポートを考えてまいりました。
ただ最終的にロシアの直前でこのような状況になり、代表監督を引き受けたということで非常に責任を感じている中ですけども、精一杯ロシアに向けてチーム作りをしていきたいなという覚悟で今おります。
2年間、現場を離れて技術委員長という立場で仕事をしてまいりましたので、まずは指導者としての心身を整えて、しっかり選手を見て、日本サッカー界を見て、これからチーム作りをしていきたいなと考えています」
―ハリルホジッチ監督が構築しようとした縦に速いサッカーを引き継ぐのか、違ったスタイルを追求するのか?メンバー選考について、経験がありながらも出場機会を減らしていた香川や岡崎、本田などについて
「(ハリルホジッチ)監督のスタイルというのは、今までの日本のサッカーに足りなかった部分でもあると思います。一対一に強さを求めたり、縦の攻撃に対する推進力を求めたり。
これは今までのA代表だけではなくて、各カテゴリーが世界に行って世界基準を知った上で、少なからずそういうものが足りない上で次のステージに進めなかったという部分をハリルホジッチ監督は世界基準、自らワールドカップに参戦した上で非常に高い…言葉ではデュエル、縦というシンプルなことですけど、実際内容に関しては非常に高度なもので、それを選手たちに強く要求していた。
そのスタイルは間違いなく現状の日本代表チーム、日本のサッカーにとって必要なことではあるとは思います」
「ですから、そういうものをいろんな角度から…縦への攻撃に関しても間違いなく必要なんですけど、そのタイミングや瞬間を質を上げた中でそういうものを作り上げていくとか。
一対一の場面でもパワー的なところを要求したいですけど、なかなかそこは体格的、フィジカル的な要素の中で戦えないところがあります。別の角度からそういうものに対応していく、という。
間違いなく必要なことに関しては、継続して考えていきたいなと思います。
ただ、やはり日本化した日本のフットボールというものはありますし、その中には技術力を最大限に活かしたり、戦い方においても規律や組織的なところで結束して戦っていく強さ、化学反応を起こした上で戦える強さ。
そういうものをベースにした上でこれからはそういうものを構築していく必要があると思いますし、自分自身も必要だと思っています。
ただこの期間で継承していく部分と…結果は求めたいんですけど、やはり選手たちがもっと自分のプレー、パフォーマンスをまず素直に代表チームで…やはり自クラブでプレーしている以上のものが当然出るはずである代表チームだと思います。
そういう選手がストレートにプレーできる状況を作っていきたいなと感じていきます。
チームのスタイルですとか編成ですとか、今日コーチングスタッフを承認していただいたので、彼らとも協力してそういう編成を考えていきたいなと思いますし。
選手の選考に関しても、非常に経験ある選手がキャンプで招集されないとか、試合に対する出場機会が少ないとかありますけども、やはり現状のコンディションをしっかり把握しなければいけないと思います。
海外組の中では怪我をしている選手が6週、8週試合に出ていない状況がありますし。
確かに経験、実力、実績ある選手ですけども、実際監督もその辺の基準をしっかり持ってて、現状のコンディションを非常に気にされてたのは間違いないですし、これからの選考に関してもここ1ヵ月足らずでのコンディションというものも過去の経験、実績というのもあります。
プラスここ1ヵ月の状況を正確にしっかり見極めた上で、最高の化学反応が起こるチーム、グループとして良いパフォーマンスが出る状況、選手選考をスタッフも総力をあげて結集した上で選考していきたいなと思っております」
―コミュニケーションや信頼関係という話があったが、技術委員長として何が一番問題だと感じたか?またワールドカップまでの短い間で、新監督として何が一番大事か?
「(ハリルホジッチ)監督の選手、チームに対する要求というのは、やはり世界基準、世界で戦うには、ワールドカップで戦うにはこういうプレーをしなければいけない、こういう戦い方をしなければいけないというのことを強く選手に要求しています。
これはもちろん当然なことですし、それに対する戦術的なところ、選手一人一人の役割等も厳しく要求しています。
それはもちろん指導者として当然のことですし、それが全体として形になっていくことがチーム力を向上させていく。それは間違いなく必要なことですし、それに選手たちが応えてプレーしようとする。
ただ、監督は非常に高い基準で選手に求めているところは感じました。
それはよくあることですし、監督の意図と選手たちのやらなければいけない、やりたいプレーのギャップを合わせていかなければチームとして…というところがありますので。その上でのやり取りというのがあります。
自分自身は選手たちの気持ち、現状、状況、心理的なところは監督にも伝えて、日本人選手たちのDNAの中でやれる部分はもっとあるし、違う角度からというのも。そういうコミュニケーションも間に入りながら構築していく。
その辺のギャップを、コミュニケーションが足りないとかいうことではなくて、チームとしてはやっていくことなので。
それが成果として出ないと、そういうことを言われてしまいますけど、十分そういうことがありながら、その辺のギャップがなかなか埋められない、選手たちが追いつこうとしても要求に応えられないというところは感じました。
まだまだ選手たちもそういうことに応えられる力があると思いましたし。監督ももっと高い要求あったのかもしれないですけど、常に現状をバランス良く機能していたかと言うと、僅かな差はあったんではないかと思います。
僕は彼らのパフォーマンス、プレーがそのまま素直に出ていくのであれば、間違いなく良い形で日本チームは融合して結束して、そういうプラスアルファの力が出ていくと思いますし。
とにかく結果を求めたいです。これはワールドカップですから、少なくとも予選(グループステージ)を突破していく力を今、見せたいと思います。
ただそこを求めるよりも、まず今は選手が持っているプレー、パフォーマンスを確実に出してもらう、出させたい、表現させたいという気持ちで…そういうスピリットのある選手たちを招集して編成したいと思っています」
―打診を受けた時の心境、決断に至るまでの考えや経緯。また、素直なプレーを出させるために選手たちに求めたいこと
「先月の末に、会長からは今回の打診をいただきました。
その時は、正直私自身も間違いなくハリルホジッチ監督を支えていきたい、サポートしていきたいという今まで通りの気持ちでいっぱいでしたし。
ただ一方で、さきほど話した通りの状況の中でのギャップの中で、あまり良い状況ではなかった遠征を踏まえて、自分の中ではこれから2ヵ月でどう劇的に変えていくのかというところを考えていたところなので、今回のこの決断に対して自分が要求されたことで非常に戸惑いはもちろんありました。
技術委員長としての立場は精一杯やってきたつもりですけども、足りなかったという部分を強く感じていましたし、監督同様(解任)になってもということを思ってもいましたし。
そういう英断の中でこういう決断をしてもらって、最後は自分の中でしっかりこの大会で責任を、というものを持つまでは戸惑いを持っておりました。
ただこういう事態なので、自分がという思いで最後は引き受けさせてもらいました。
自分が選ぶメンバーですから、もちろん信頼をして日本代表チームの大きなパフォーマンスを生むための選手だと思っていますし、そういう選手たちに対しては、あまり個人のプレーに関しては制限はかけたくないと思っています。
本来の自チームでやっているパフォーマンスを私自身も評価して選びたいと思いますし、個人の力だけではなくて、日本サッカーの強さ、良さというのはグループでの力、パフォーマンスだと思うので。
連携だったり連続してやっていくプレー、そういう形を取れる選手を選考していきたいと思いますし。
まずは選手たちを良い状態に戻して、本来の自分のやれる…グループとしてプレーできる感覚を持ってほしいというのを伝えたいなと思います」