名将グアルディオラに出来てしまったCLの負けパターン バルセロナ以外のクラブで優勝はできないのか

2ndレグは試合途中に退席となったグアルディオラ photo/Getty Images

マンチェスター・シティを指揮するジョゼップ・グアルディオラは紛れもない名将だ。これまでにはなかったアイディアから戦術を進化させるなど、21世紀のサッカーに革命を起こしている。恐らく今季はこのままプレミアリーグを制するはずで、そうなればリーガ・エスパニョーラ、ブンデスリーガに続いて異なる3国でリーグタイトルを獲得することになる。タイトルの数で見ても名将との評価がふさわしいが、チャンピオンズリーグの戦いに目を向けるとどうだろうか。

今季マンCは優勝候補の一角と騒がれていたが、準々決勝で国内のライバルであるリヴァプールに2戦合計1-5で完敗。1stレグ、2ndレグの両方で敗れてしまい、今季もマンCの悲願は実現しなかった。CL制覇を目標にグアルディオラを招聘しているため、欧州での戦いだけにスポットを当てれば昨季に続いて失敗したことになる。チームがグアルディオラの下で成長しているのは間違いないが、目標であるCL制覇を達成するうえでグアルディオラはふさわしい指揮官とは言い難い。近年の成績を見ても、グアルディオラはCLで似たような負け方を繰り返している。

グアルディオラはバルセロナを指揮していた際に2008-09、2010-11シーズンの2回CLを制している。これだけでも凄い記録だが、バルセロナを離れて以降の成績は期待外れだ。マンCと同じくCL制覇を目標とするバイエルンでは3シーズン指揮を執ったが、いずれもスペイン勢に敗れてベスト4敗退となっている。2013-14シーズンはレアル・マドリードと対戦し、アウェイでの1stレグを0-1で落とした。2ndレグでは反撃を試みたものの、逆にガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウドを中心とするレアルの速攻に全く対応できず4失点。悪夢ともいえる2戦合計0-5の完敗だった。ポゼッション率では上回りながら、相手のカウンター一発に沈むパターンはグアルディオラお馴染みのものだ。

続く2014-15シーズンはバルセロナと対戦し、こちらはアウェイでの1stレグを0-3で落としている。基本的にグアルディオラは相手に合わせて戦い方を変えるような真似はしないが、バルセロナ相手にアウェイで真っ向勝負を挑むのはリスクが大きすぎる。1stレグで3点差もついてしまえば、2ndレグで逆転するのは限りなく難しい。このゲームでは2ndレグで3-2の勝利を収めたが、やはり1stレグのダメージが大きすぎたために決勝進出を逃している。

2015-16シーズンはアトレティコ・マドリードと対戦し、アウェイで迎えた1stレグを0-1で落としている。2013-14シーズンから続いていることだが、グアルディオラはアウェイでの1stレグを全て落としてしまっているのだ。しかも常に攻撃的に振る舞っているにも関わらず、どの試合も無得点に終わっている。アウェイゴールを奪えないまま敗れてしまっているため、ホームでの挽回が余計に難しくなってしまう。アトレティコ戦も70%近いポゼッション率を維持しながら敗れており、負けパターンのようなものが出来上がっている。今季の準々決勝リヴァプール戦もアウェイでの1stレグを0-3で落としており、アウェイでどのように振る舞うべきかを完璧に把握していないようにも感じられるのだ。ホーム& アウェイでの戦いではサポーターの後押しがある本拠地での戦いが圧倒的に有利で、アウェイでの1stレグは負けないことを第一目標に戦うプランもある。しかし、グアルディオラの場合は2ndレグに希望も残らないスコアで敗れてしまうケースが目立つ。

また、今季は珍しくグアルディオラの哲学に迷いがあった。グアルディオラはリヴァプール戦1stレグの前に自分たちの戦い方は変えないと強調していたが、このゲームでは左サイドバックにセンターバックを本職とするアイメリック・ラポルテを起用している。これはリヴァプールの右サイドに位置するFWモハメド・サラーをケアするためのアイディアで、グアルディオラとしては珍しく相手の長所を消すための戦術を用いている。一方でユルゲン・クロップは180分間自身の哲学を貫いており、今回は受けに回ったグアルディオラが手痛くやられる結果となってしまった。1stレグでラポルテを左サイドバックに回したこと、今季好調のFWラヒーム・スターリングをベンチスタートにしたことなどは批判の対象と なっており、采配に問題があったと指摘されても仕方がないだろう。

グアルディオラが名将としてさらに評価を高めるには、やはりバルセロナ以外のクラブでCLを制するしかない。バルセロナではFWリオネル・メッシという絶対的エースがいたことが大きく、相手に守備を固められてもメッシが好調なら強引に崩すことができた。さらにクラブの哲学を完璧に理解するシャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、ジェラール・ピケらの存在もあり、グアルディオラが理想とするサッカーを実現する最高の場所だった。その後指揮したバイエルン、マンCでも基本コンセプトは大きく変わっていないが、やはりパスワークの質は全盛期のバルセロナに劣る。メッシほど突破力と得点力に優れた天才がいるわけでもない。グアルディオラがバルセロナ以外のクラブでCLを制するに は、相手との力量を考えたCL仕様の戦い方を身につけなければならない。ホーム、アウェイに関係なく相手を圧倒できたバルセロナ時代とは状況が異なるのだ。

まずはアウェイの戦い方を変えるところからだ。1stレグを敵地で戦い、2ndレグをホームで戦えるのは有利といった意見もあるが、グアルディオラの場合はこれが当てはまらない。インテルに敗れた2009-10シーズンも、チェルシーに敗れた2011-12シーズンもこれまでと同じくアウェイでの1stレグを落としている。ホームではある程度結果を出せているため、敵地での1stレグを無難に凌ぐ術が必要だ。仮にマンCの3シーズン目でCLベスト4にも届かないようでは、名将との評価に傷がつくことになるだろう。チームは間違いなく成長しているが、グアルディオラ自身が成長しないことにはクラブの悲願達成は難しそうだ。

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