「登録」へ高まる期待 イコモス、月内にも勧告

 今夏の世界文化遺産登録を目指す「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本の12資産)について、国際記念物遺跡会議(イコモス)は月内にも登録の可否を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に勧告する。同遺産はイコモスの正式な支援を受けて価値を練り上げた国内初の事例で、「登録」の勧告に期待が高まっている。
 イコモスは昨年9月、潜伏キリシタン遺産を現地調査。その後も本部の委員会が審査を続けてきた。
 勧告は(1)登録(2)追加説明を求めて登録を保留する「情報照会」(3)登録延期(4)不登録-の4種類。イコモスが登録を勧告すれば、ユネスコ世界遺産委員会でそのまま決定されることが通例だ。
 イコモスは2016年1月、政府が世界文化遺産登録を推薦していた「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」について「価値証明が不十分」と政府に報告。同時に「良い結果が得られるように助言と支援ができる」と伝えた。同年2月に県とアドバイザー契約を結ぶと、価値変更と一部資産の除外などを助言。政府は17年2月、「潜伏キリシタンの信仰」に価値を改めた潜伏キリシタン遺産を推薦した。
 今回はイコモスが選定したアドバイザーと共につくりあげた推薦内容を本部の委員会がどう評価するかが焦点だ。NPO法人世界遺産アカデミー(東京)の宮澤光主任研究員は「イコモスが中に入って修正した内容であり、問題点は少ない。各資産の法的な保護措置も十分」と登録勧告を予想。文化庁関係者は「イコモスの助言を受けて誠実に対応してきた」と登録勧告に期待する。
 登録勧告でも昨年の「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡)のように構成資産の一部除外を求められることもある。ただ、県は「イコモスとは資産の内容も含めて話し合うことができた」と説明する。イコモス関係者は「潜伏キリシタン遺産はイコモスと推薦国が対話して価値を定めるテスト事案。そのサンプルに選ばれたのは幸運だった」と語る。
 勧告の期限は世界遺産委開幕の6週間前まで。今年は6月24日からバーレーンで開かれるため、5月13日までに勧告が出る。過去3年は5月に勧告が出たが、問題点の指摘がほとんどなかった「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬)は4月下旬に出た。文化庁世界文化遺産室は「早ければ今月下旬の勧告もあり得る」と備えている。

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