【工場ルポ】〈阪和興業系列コイルセンターの阪和スチールサービス〉ブランキングプレス本稼働加工領域を拡大 自動車向け加工品拡充

 阪和興業の系列コイルセンター、阪和スチールサービス(略称・HSS、本社・滋賀県甲賀市水口町、社長・天野元成氏)は阪和興業初の直需対応型コイルセンターで、2002年末に操業を開始した。昨年には2号ブランキングプレスラインを導入。今年3月には「無災害1千日」を達成している。設備拡充や人材育成に取り組む同社工場の現状をルポする。(宇尾野 宏之)

 主要加工設備は、スリッター2ラインおよびミニレベラー1ライン。工場出入り口は全自動のシートシャッターを採用している。また、在庫ヤードは立体座標システムで管理し、コンピューターが入荷コイルの置き場所を指定するなど、作業をできるだけ自動化できる工夫もなされている。

 このほか、天井にはウレタン断熱材、内壁には断熱ボードを取り入れているほか、エアコンも備えており、職場環境の向上だけでなく、結露の防止にも注力している。

加工の深化進める

 ブランキングプレスラインはこれまで1号のみだったが、自動車向け加工品の生産拡充を狙いに昨年8月、新ラインを立ち上げた。その後テストを重ね、このほど本稼働が始まった。

 新ラインは作動方式がリンクモーションで、金型の損耗を抑えることができる。加圧能力も600トンから800トンに増強。設備本体にかかる負担を既存機に比べ軽減した。

 また、これまでプレス部門は1直体制だったが、これを2直体制にシフトアップ。プレス加工部材の増産を図った。

 同社の前年度加工量は、前期比3千トン増の16万8千トン。今年度はブランキング増設により、ピーク時加工量とほぼ同様となる年産17万トンを目指す。

 今回のプレス増設で、プレス部材およびその母材となるスリット品の増産だけでなく、これまで以上に複雑な形状も加工できるようになった。天野社長は「阪和グループとして加工部門の深化を目指していく」とし、品質管理体制の充実のため、3次元検査装置も導入。より新プレスラインを効果的に活用できるよう、受注を進めていく。

 また、プレス部材・スリット品の生産増および品質管理部門の拡充に伴い採用を拡大し、従業員数は82人となった。採用を増やすことで地域雇用にも貢献していく。

無災害1000日を達成

 同社が「無災害1千日」を達成したのは、今年3月8日。同月23日には従業員を集め、記念式典も開催した。

 同社の経営方針は「安全」「品質」「効率」で、安全を最も重視している。継続する小集団活動でもこうした方針は貫かれており、天野社長は「安全が最優先であり、これがしっかりとできれば、品質・効率も向上できるはず」と話す。

 設備増強で加工領域の拡充や収益力向上を目指しながら、安全を最優先した人材育成を進めることで、さらなる競争力の強化を図っていく。

© 株式会社鉄鋼新聞社