【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(24)】〈電機資材〉電磁鋼板販売、初の年18万トン超え 採用拡大、EV需要増に備え

 電機資材(本社・東京都千代田区)は電磁鋼板の専門商社で、一昨年に創業70周年を迎えた。電機メーカーの業界団体(今の日本電機工業会)にあった資材調達部門を母体に発足し、電磁鋼板のサプライヤーである新日本製鉄(今の新日鉄住金)や商社などの資本参加を受け、今に至っている。

 この4月には三井物産からの株式譲渡を受け、日鉄住金物産が電機資材へ23・8%出資する筆頭株主となった。橋本淳社長は「新日鉄住金グループの専門商社という位置付けがより明確になった」とし、今後具体的な連携施策を検討していくという。

 電磁鋼板の市場環境は好調で、電機資材の電磁鋼板販売量も昨年度は前年比で1割ほど増え、初の18万トン超えとなった。追い風をしっかり捉えたことで業績も伸びており、2018年3月期の連結売上高は400億円程度と、前期比で増収・増益になる見込みだ。

 橋本社長は「新日鉄住金と綿密に連携することで、今年度も電磁鋼板の販売量は1割増を目指したい」と話す。袖ケ浦(千葉県)や堺(大阪府)の工場も駆使し、スリット加工や斜角せん断といった加工機能と併せて「お客様のご要望に製販一体でお応えしていく」。

 電磁鋼板の好調ぶりは当面続くものと見込まれている。エコカーや、ロボットなど産業用といったモーターで使われる無方向性電磁鋼板(NO)の需要は旺盛で、将来的には電気自動車(EV)の普及に伴う新規需要の発現も期待できる。

 橋本社長は「まず眼前の車種に万全な備えをしつつ、今後の新車でも必要に応じて我々の運営体制を機動的に見直し、しっかり対応していく」と話す。

 それだけに電機資材として、まず足場固めを進めていく。2工場のBCP対策や設備保全を強化するとともに、中途を含めた採用を拡大し、営業・工場現場の双方で人員を厚くする考え。営業や品質管理、情報共有を強化するためのシステム更新にも早ければ今年上期から着手する。

 またプレスや金型メーカーとも協業を深め、連携することで需要増に備えていく構えだ。

 一方、好調なNOに対し、電力業界の変圧器(トランス)で使われる方向性電磁鋼板(GO)の需要はやや軟調な状況。第3次トップランナー基準による変圧器への切り替えやPCB、環境対応が進む中で、新たなビジネスチャンスを狙っていく。

 ここでも電機資材の加工機能を発揮するとともに「状況次第で、お客様が保有している加工設備を活用させていただくといった協業・互恵関係を築き、最適な生産・供給体制を提案していきたい」。

 こうした国内での営業力強化を第一義としつつ、海外では中国事業をどう整えていくかがテーマとなる。日鉄住金物産とは中国のコイルセンター、蘇州日鉄金属制品ですでに協力関係にあるが「今後より連携しやすくなるのでは」と期待される。ドローンや車載向けで中国の電磁鋼板需要は今後も増えていくだけに「香港、広州、蘇州の3事務所で連携して捕捉していく」。

 新日鉄住金グループであるとともに、数多くの電機メーカーも株主となっている電機資材。「お客様にさまざまな提案ができるという当社の強みをきちんと守り抜くことが株主の利益になる」。営業と加工技術の両面に通じた人材育成を進めながら、高まる電磁鋼板のニーズに備えていく。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

 企業概要

 ▽本社=東京都千代田区

 ▽資本金=3億1千万円(新日鉄住金の出資比率20・8%)

 ▽社長=橋本淳

 ▽連結売上高=約400億円(18年3月期見込み)

 ▽主力事業=電磁鋼板の販売・加工

 ▽社員・役員=127人(18年3月末現在)

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