東大など、超高精細印刷可能な技術で銀ナノ粒子の原理解明

 東京大学、産業技術総合研究所、山形大学は17日、特殊な銀ナノインクを用いて超微細回路を簡便・高速・大面積に印刷できる「スーパーナップ(表面光反応性ナノメタル印刷)法」と呼ばれる技術において、銀ナノ粒子の吸着性とインクの安定性を両立する原理を解明したと発表した。新たな高機能ナノインクの開発や高度印刷技術への展開などが期待されている。

 これまで同技術で用いられるインク中の銀ナノ粒子が塗布まで凝集せずに安定に保たれる理由は不明だったが、今回の研究成果によって銀ナノ粒子表面を保護するために含まれる脂肪酸の分子鎖の挙動が大きな役割を果たしていることが明らかになった。

 これによって従来は特殊な基材に限り可能だった同技術を、より安価な材料など幅広い基材で展開できる可能性が高まるとともに、分散性・吸着性の自在制御により、新たな機能を持ったナノインク開発への応用も期待できる。

 東大の長谷川達夫教授は「これまで銀ナノインクに限られていた技術を、銅やその他の高機能金属に応用することも期待できる」と話した。

 塗布や印刷でフレキシブルな電子機器を製造可能なプリンテッドエレクトロニクス技術は、大規模・複雑化した従来のデバイス製造技術を格段に簡易化できる革新技術として期待されている。

 「スーパーナップ法」は、紫外線の照射によって形成した活性の高い基材表面に、銀ナノインク中の銀ナノ粒子を選択的に化学吸着させる技術で、線幅1マイクロメートル以下の銀配線を簡易に印刷できる画期的な技術。従来の高精細印刷法と比べて精細度は20倍以上に向上できる。

 現在は、田中貴金属工業が同技術を用いたフレキシブルなタッチパネルセンサの量産化を進めている。

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