スターバックス全店閉店、何がいけなかったのか

By 太田清

米フィラデルフィアのスターバックス店内で座り込む抗議運動の参加者ら=16日(ロイター=共同)

 米コーヒーチェーン大手スターバックスの店舗で、店から出て行かない黒人男性2人を警察を呼び排除したことが黒人差別に当たるとして連日、米メディアを賑わせている。同社は17日、米国にある8千以上の全直営店を5月29日午後に一時的に一斉閉店し、約17万5千人の従業員に対して人種差別防止に向けての社員教育を行う計画を明らかにした。スターバックスの対応の何がいけなかったのだろうか。 

 米メディアの報道によると、トラブルは12日、東部フィラデルフィアの店舗で起きた。黒人男性2人が入店し、トイレを使わしてほしいと頼んだが、同店の従業員は「注文していないお客様は使えない」と説明。しかし、2人は何も注文しないまま店に残り続けた。友人と待ち合わせていたという。店側はさらに2人に店から出て行くよう要請したが、出ていなかったため、警察に通報。駆けつけた警察官が不法侵入容疑で2人を逮捕し、警察署に連行した。店側がこれ以上の対応を望まなかったため、2人は警察署で解放された。 

 このままであれば、単なる客と店との間の小さなトラブルで終わっていたはずだが、店にいた別の客が逮捕と連行の様子を撮影し、ツイッターにアップ、拡散したことから騒ぎが広がった。2人が黒人であることから「人種差別」との批判が噴出。黒人活動家らによる抗議活動が行われたほか、SNS上ではスターバックスに対するボイコット運動も起きた。 

 フィラデルフィアの警察署幹部は「警察官は現場で丁寧に3回、退店するよう命じたが、聞き入れられなかったため逮捕した」と説明。逮捕に際して2人の抵抗などはなかったという。「店側が排除してほしいと望んでいる以上、警察官として当然の義務を果たしたまで」と、その対応に問題がなかったと強調した。  

 一方で、同社のケビン・ジョンソン最高経営責任者(CEO)は、店側の対応は「言語道断」とした上で、2人に直接会い謝罪するほか、再発防止を約束するなど、「黒人差別」との批判を全面的に受け入れた。SNSにはその後、カリフォルニアの店舗で白人の客はトイレが使えたのに、黒人は使うのが許されなかったとする主張なども掲載された。 

 問題の焦点は、退店しない客に取った店側の対応が正しかったかどうかよりも、店側の取った対応が黒人差別に当たるかどうかに移ってしまった。逮捕の正当性を訴えた警察幹部自身も黒人で「私自身、潜在的な偏見があることは知っているが、警察が人種によりその対応を変えることはない」と主張するなど、はからずも人種問題を意識していることをほのめかした。

 スターバックスの対応は、企業イメージが決定的に悪化する前に、謝罪と迅速な対応で、ダメージを最小限にとどめようとする意図があると受け止められている。「言語道断」とされたフィラデルフィアの女性店長だが、トラブルの後、店長の職を解かれ、一部報道によると、その後、退職した。SNSではトイレ使用を許さなかった女性店長の対応はスターバックスが策定したポリシーに則ったもので、警察を呼んだのは行き過ぎであるにしても、その過失だけを問うのは会社としての責任逃れだとの意見も出ている。 (共同通信=太田清)

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