【片言隻句】鋼材流通の「働き方改革」

 「鋼材流通は、業務での電子化があまり進んでいない業界にみえます」と、AIやITに詳しい人の声。日々の受発注業務を、スタッフがその都度対応しているケースが多いと感じているようだ。「特に大手の顧客ではシステム化が進んでいる。継続的な取引であれば、電子化によってミスが減り、オフィス全体の生産性も高まる」と。

 先日、自動車販売店を訪問した。そこで販売員にもらった名刺。メールアドレスも携帯電話番号もない。名刺にメールアドレスがないのは「時代遅れの証拠」と指摘されたのは10年以上も前だが、自動車販売の場合は小売りが主体で地回りも多い。業務の性質上、そうした情報を入れない方が好都合なのだろう。逆に「ビジネスモデルを変えるのが難しい」業種とも言えるのだろうが。

 一方、鋼材流通業は卸売りの性質が強い。加工業務も増え小売り的になってきてはいるが、自動車の販売員ほどではない。効率化の余地はある。

 そんな話を鋼材問屋の経営者に話したら「難しいかもしれないね」との反応が返ってきた。実際、同社でも社員に対して「業務効率を上げるためにはどうしたらいいか」と問題提起して意見を求めたことがある。社内はほぼ無反応だったという。

 「効率化を考えるということは、自分たちの仕事量が増えるか、下手をすれば不要になるということにつながりかねないからね。それに商慣習上、人手を介するということに顧客満足を見出している部分もある」。

 既存の販売コンテンツと慣習が固まっていれば、変化は好まれない。反面、トレンドである「働き方改革」も進めにくくなる。「人手不足は2020年ごろから徐々に解消する」という予想もある中で、これからの鋼材流通をどう考えていけばいいか。

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