早期の全線フル要請 JR九州、与党検討委で

 九州新幹線長崎ルートの新鳥栖-武雄温泉間の整備方法を巡り、与党検討委員会は18日、運行主体となるJR九州の青柳俊彦社長から意見を聞いた。青柳社長は「最大限の整備効果が発揮できる」として、あらためて全線フル規格での早期整備を求めた。フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)とミニ新幹線の導入には否定的な見解を示した。
 検討委では、同区間を単線のフル規格で整備する案も議論に上がった。全線フルは、佐賀県が1千億円超とされる追加負担に難色を示していることが課題。現行案では、上下線の複線整備で国負担を含め6千億円かかるが、単線にすることで費用の圧縮を図る狙いがあるとみられる。
 青柳社長は全線フルは九州新幹線鹿児島ルートの実績もあり、大きな課題はないと表明。整備効果を高めるため、地域の魅力を発信する観光列車の運行も検討するとした。検討委の山本幸三委員長は終了後「重い意向だ」と話した。
 国土交通省が示した試算では、全線フルの同社の収支改善効果は年間約88億円の黒字。青柳社長は記者団に佐賀県の財源問題に絡み、負担を要請された場合の対応について「収支改善効果の範囲内であれば、協力できることはあるかもしれない」と含みを持たせた。
 FGTの導入は「極めて限定的な効果しか得られず困難」と言及。ミニ新幹線についても、工事期間中や開業後に在来線列車で所要時間増や減便が生じ、利用者に不便を掛けることを指摘。大雨などでダイヤの安定性が劣ることも挙げ、解決すべき課題があるとの認識を示した。
 また、2022年度の暫定開業時に導入される新幹線と在来線特急を乗り継ぐ「リレー方式」については、収支が大幅な赤字になることを明らかにした。
 検討委は月内に長崎知事、ゴールデンウイーク明けに佐賀知事から意見を聞いた上で、夏ごろまでに整備方針の結論を出す方針。

◎青柳社長 一問一答/収支改善効果の範囲で協力
 与党検討委終了後、青柳俊彦JR九州社長と記者団の主なやりとりは以下の通り。
 -全線フルは佐賀県の財源負担が課題となっている。どう思うか。
 整備新幹線の財源スキームそのものにわれわれがコメントすることはない。ただ、今回のような事態では、いろいろな観点から総合的に対策を取らないと、今のスキームだけにこだわっていては(全線フルは)できないのではないか。与党検討委の中で具体的に議論されるだろう。
 -スキームを変えるべきだとの考えか。
 いや、そうではない。スキームを変更するのは非常に難しい。九州だけの問題ではないし、安易に変えられるものではない。
 -財源負担で与党検討委から協力を求められた場合に応じる考えはあるのか。
 収支改善効果の範囲内であれば、協力できることはあるかもしれない。ただ今のところ何も打診はない。受けてから検討する。
 -ミニ新幹線は運行主体として現実的に「ない」ということでいいか。
 いや、ミニ新幹線も効果はあるとは思う。ただわれわれが心配しているのは二つ。一つは工事中の地元の皆さんへの迷惑が非常に大きい。九州において最大の輸送区間であり、安易に代行輸送などはできない。二つ目は在来線を走るので踏切事故の危険性があり、雨風の影響を受ける点。ミニ新幹線自体は成立していると思うが、(与党検討委では)運行する中で課題が大きいことを申し上げた。
 -リレー方式は収支採算性が取れないと指摘した。試算をしたのか。
 試算の結果、かなりの赤字が出ると覚悟している。(具体的な額は)まだ公表する段階ではない。

記者団の質問に答える青柳JR九州社長=衆院第2議員会館

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