国登録文化財 「富貴楼」解体へ 買い手付かず

 長崎市上西山町にある国登録有形文化財の老舗料亭「富貴(ふうき)楼」が解体される見通しであることが19日、分かった。後継者不在と人手不足に伴い昨年6月から休業しており、建物の保存に向け譲渡先を探したが買い手が付かなかったという。
 富貴楼側は既に国登録有形文化財の登録抹消手続きに入っている。市景観重要建造物にも指定されているため、市は25日に諮問機関の市景観審議会に指定解除を諮る。実際の解体はこれらの手続きをクリアした後になる。市内の国登録有形文化財は29件、市景観重要建造物は18件あるが、いずれも取り消されれば市内初となる。
 休業後の建物活用に向け複数社が関心を寄せていたが、老朽化や改修の難しさなどが障害となり、買い手が付かなかったという。富貴楼側にとっても、建物を維持管理し続けるのは負担が大きいことから解体の検討に入ったとみられる。
 富貴楼は木造3階建て、延べ床面積は約740平方メートル。江戸時代の1655年ごろに創業した料亭が前身で、初代首相の伊藤博文が屋号を命名した。1969年の長崎国体時は皇太子ご夫妻(現在の天皇、皇后両陛下)に昼食を出前で提供したこともある。

解体される見通しとなっている富貴楼=2017年4月、長崎市上西山町

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