熊本地震2年 炊き出し経験、料理本に 久本在住・山本さんら制作 川崎市高津区

制作実行委員のメンバーと山本さん(右)。ライター、編集者、制作、イラスト、カメラマン、デザイナー、料理家、防災専門家など15人の実行委員で制作した

 熊本地震から2年となる4月14日、久本在住の山本美賢さん(54)が中心となる制作チームが「おいしいミニ炊き出しレシピブック」を発行した。節水料理や限られた食材で美味しく作る工夫を紹介し、日常使いをしながら、災害時に役立つ知識が身につく料理本となっている。

 本には豚汁やコンビーフカレーなど53のレシピを収録。山本さんたちが熊本地震での支援活動を通じ、交流した人から話を聞き、炊き出しで実際に作られていた料理、缶詰や粉物を使用したアイディアレシピなどを盛り込んだ。

 「発災から24時間まで」、「発災25時間から72時間」などの5段階の時系列に沿い、「節水」「高齢者にやさしい」「繊維質がとれる」などの項目別に紹介。支援した地域の避難所運営者の話や、災害時のお金と手続きの話などのコラムも組み込んだ。

 山本さんは「目指したのは、普段使いができる料理の本。減災のための『カジュアルな訓練』になるように」と話す。

「炊き出しにきんぴら?」

 2016年の熊本地震の際、山本さんは被災地に支援物資を送ろうと近所やPTA仲間に声をかけた。偶然にも、PTA仲間の弟・万江英彰さんが被災した益城町の広安西小学校でPTA会長をしていたため、同小の避難所に支援物資を送った。

 さらに、万江さんと一緒に炊き出しをしていた満田結子さんとも縁ができた。飲食店を営む満田さんは、地震発生時、食材が腐る前に家庭鍋で調理し、近所に提供する小規模な炊き出しを行っていた。山本さんは、小さなバットにきんぴらやお浸しが並ぶ炊き出しをSNSで見て驚いた。「炊き出しと言えば大きな鍋で汁物を大量に作るイメージ。満田さんは、近所でごはん会の様に行っていたのが衝撃で」と話す。

「普段の味」が活力に

 16年秋、益城町を訪問。給食センターが稼働できない小学校の児童に郷土汁を振る舞うボランティアに参加した。「宇宙一おいしい」と喜ぶ児童をみて「食べなれた味が力になることを目の当たりにした」と山本さん。

 この経験と満田さんの炊き出しをヒントに、日常から使いながら、災害時にも役立つレシピ本制作に取りかかった。

 クラウドファンディングで集めた費用は約320万円。山本さんの知り合いの編集者、カメラマン、デザイナー、ライター、料理家、防災・減災専門家に声をかけ約2カ月間で制作した。「ふだん使い」にこだわり、見やすく手に取りやすいデザインに仕上げた。

 本制作に防災・減災の監修で携わった鈴木光さんは「分かりやすく伝えながら中身が軽くならないように注意した。新しい防災・減災の伝え方に挑戦する一冊になったのでは」と話す。

 山本さんは「災害時、普段食べなれた味が一番心をほぐす。ご近所同士のごはん会の延長が『ミニ炊き出し』になるように。楽しく、前向きに大切なことを伝えていきたい」と話す。

 本体1300円(税別)。A4・100ページ。Webサイト「からだにいいことスタイルSHOP」(http://karakoto.shop-pro.jp/?pid=130441199)から購入できる。
 

「おいしいミニ炊き出しレシピブック」同制作実行委員会発行

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