金属行人(4月20日付)

 最近、幕末から昭和初期にかけての偉人の伝記やノンフィクションを好んで読む。手当たり次第にいろいろ読みあさっていくと、これまでの通説と異なって歴史的に再評価されている人物が目に付く▼現在大河ドラマで放送中の「西郷どん」。西郷隆盛の盟友・生涯のライバルとして描かれている大久保利通は、地元鹿児島でも西郷に比べて人気がない。西郷を陥れて西南戦争を起こさせたという〝冷徹〟なイメージが付きまとうためだろう。ただ専門家の間では、廃藩置県など大きな改革を断行し、明治の礎を築いた「実務者としての能力」が近年改めて評価されている▼日露戦争当時、首相だった桂太郎はロシアとポーツマス条約を結んだ際、賠償金や領土が取れなかったため国民の間で人気が沸かなかった。近年は、武器や戦費が底をつきかけていた日本にとって絶妙のタイミングで和平交渉をまとめたとの見方が多くなった▼歴史的な評価は時代に照らし合わせて変わっていくもののようだ。今後、鉄鋼業界の歴史を築いてきた先人たちの功績や出来事への評価も少しずつ変わっていくのかもしれない。ただ、セクハラ問題で職を辞した官僚や県知事の評価・批評は永遠に変わることはないだろうけど。

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