『木綿のハンカチーフ』は太田裕美の「かわいすぎる声」に尽きる!

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第3回  太田裕美『木綿のハンカチーフ』  

最近、ますます加熱するアナログ盤ブーム。そしてシングル盤が「ドーナツ盤」でリリースされていた時代=昭和の楽曲に注目する平成世代も増えています。
子供の頃から歌謡曲にどっぷり浸かって育ち、部屋がドーナツ盤で溢れている構成作家・チャッピー加藤(昭和42年生)と、昭和の歌謡曲にインスパイアされた活動で注目のアーティスト・相澤瞬(昭和62年生)が、ターンテーブルでドーナツ盤を聴きながら、昭和の歌謡曲の妖しい魅力について語り合います。

チャ:タリラリラーンのコニャニャチハ!……と、今週も昭和な挨拶で始めてみました。こんにちは、チャッピー加藤です。

相澤:……赤塚不二夫さんの言語感覚ってスゴいですよね。こんにちは、相澤瞬です。

チャ:おかげさまで、第1回・第2回で取り上げた光GENJIのファンから「今の視点で取り上げてくれて、ありがとう」という反響をいただきまして……やっぱり、今でも根強いファンがいるんだね。

相澤:そういう声って、本当にありがたいですよね…。より大勢の方に昭和歌謡の魅力が伝わるよう、誠心誠意努力させて頂きます!

チャ:同じく!……じゃ、さっそく始めますか。

■かわいすぎる太田裕美の「声」

チャ:前回は銀座のスナックを借りたんだけど、今回も気合入れて、ニッポン放送の……会議室を借りました!「スタジオじゃないのかよ!」ってツッコミが入りそうだけど、あいにく空いてなくてさぁ。

相澤:スタジオでやったら、二人で『オールナイトニッポン』やりたくなっちゃいますね!(笑)

チャ:それイイね! 次はちゃんと確保します。……さて、きょうのお題はこちら!

チャ: 1975年12月21日発売、太田裕美の4枚目のシングル『木綿のハンカチーフ』。公称ミリオン突破で、彼女の最大のヒット曲にして代表作だけど、瞬くんは太田裕美、大好きなんだよね?

相澤:もうウルトラリスペクトでございます! 昭和のアーティストで、もっとも影響を受けたアーティストの一人ですね。

チャ:あ、そんなに? 実はオレも大好きなんですよ。『木綿…』が出たときは小学3年生だったけど、リアルタイムで好きだったなー。あの舌っ足らずな声! てか、女性として好きだった(笑)。

相澤:わかります!(笑)キュートだし、本当に最高ですよね!
かわいい……てか、このジャケット、サイン入りじゃないですか!

チャ:そうなのよ。もう19年前になるけど、仕事でお目にかかったときちゃっかりと……(笑)それはさておき、さっそく聴いてみよう。(♪ターンテーブルで演奏、聴き入る二人)

相澤:(聴き終えて)……いやー、改めて、いい曲だなー!

チャ:何千回と聴いてるけど、ホント何度聴いても素晴らしい! この曲、3分45秒もあるんだよね。当時の歌謡曲としては長いんだけど、なぜなら歌詞が4番まであるから。

相澤:手紙形式で、男女の掛け合いになってるとこがいいですよね。

チャ:男が都会に出て行って、遠距離恋愛になって、たぶん他に女ができちゃったんだろうなぁ。もう田舎には帰れなくなって、別れを切り出すっていう。よくある話なんだけど、なんか切ないよなー。

相澤:彼女が、最後のプレゼントに、涙をふくハンカチーフをねだるところ、泣けますよね。

チャ:そこ、最強のオチだよね。しかもただのハンカチじゃなくて、「木綿の」ってわざわざ指定してるんだもん。どれだけ泣いても、吸収性バッチリ(笑)。

相澤:これ、小学3年生のチャッピー少年には、当時どう聞こえてたんですか?

チャ:あ、正直に言っていい?「古くさいなー、この歌詞」って思った。小学生が古くさいも何もないんだけど(笑)。

相澤:「古くさい」というのは、具体的には?

チャ:この女性って「ただじっと待つ女」じゃない? その女性像が演歌っぽいというか、古いと思った。当時って、「中ピ連」ってのがあったり(※ググってね)、ウーマンリブ運動が盛んだったのよ。

相澤:へー! そうなんですか。

チャ:その頃、担任が女の先生だったんだけど、まさにウーマンリブタイプで、クラスの女子も、みんな気が強かった(笑)。だから余計にそう感じたし、完全に世間の流れに逆行してたよね。

相澤:というか、そもそも太田裕美さん自身、そういう古いタイプの女性じゃないですよね?

チャ:そう。原宿ペニーレインで飲んだくれて、クダ巻いてる吉田拓郎を横で叱ってたヒトだから(笑)。

相澤:そうなんだ!(笑)……男前なところもまたかわいいですね……。でもこの曲では、キュートな声で、けなげな女性を演じてますよね。

チャ:そうそう、そこが凄いのよ。女性パートのところを歌うときの声が超絶かわいいじゃない!……オレはこの歌の「彼氏」に言いたい。「帰ってやれよ!」

相澤:(笑)。ホントそうですよねー。そもそも、こんな可愛い彼女がいるのに、「都会に行くなよ!」って思います。太田裕美さん置いて行っちゃう男なんて、男じゃないやい!

チャ:だよねー。まあ、作詞の松本隆は「あえて」古くさい女性像を設定して、その上で「男女の往復書簡」という斬新なことをやってみよう、という実験をしたかったんだと思うけど。

相澤:でも一曲の中で、男女を歌い分けるって、相当な歌唱力が要求されますよね。

チャ:そう。それを両方、完璧にやってのけたからこそ、この曲は大ヒットしたんだと思うし、いろんなことが語られてるけど、太田裕美の「声」の勝利、それに尽きると思うね。

■「かわいい」に尽きる!

相澤:この曲、僕が最初に聴いたのはシングル盤のほうなんですけど、アルバムにも収録されてて、歌詞が1カ所だけ違いますよね? そこって、僕はすごく大事なポイントだと思っていて。

チャ:3番の頭のとこね。アルバム(※サードアルバム『心が風邪をひいた日』に収録)では、男が彼女に「君はオシャレもせずスッピンで、口紅もつけないままなんだろ?」てな内容の歌詞だけど、シングルのほうは「君は」が「今も」になってると。

相澤:そう、歌詞だけみると、たった3文字違うだけなんですけど、アルバムのほうは男が上から目線というか、ちょっぴり高圧的ですよね(笑)。

チャ:あー、なるほど。

相澤:これ、アルバムのほうが先で、シングルカットする際に、そこだけ歌詞を変えて歌い直したって聞いたんですけど、このシングルバージョンの方がよりグッと来ますよね。

チャ:うんうん、同感!

相澤:アルバムの歌詞は、「僕はここまで来たけど、君はまだそんなところにいるのかい?」って感じがするんですけど、「今も」になったことで、まだ少しだけ彼女を想っている人間味が出るというか。

チャ:言われてみると、たった1カ所の違いだけど、シングルのほうはマイルドになってるよね。さすが繊細だね、瞬くんは。

相澤:音楽のこと以外はズボラなんですけどね…(笑)。この時代の歌詞や音楽は本当に勉強になることばかりなので。僕、松本隆さんの作品をよくカヴァーするんですけど……

チャ:ふむふむ。

相澤:歌詞を見ながら歌ってると、他の方の歌詞よりものすごく浸透率が高いんですよね。心にグッと入ってくるんですよ。

チャ:あー。それはシンガーだからこそ気付くことだなあ。

相澤:なんか、松本さんの歌詞を見ていると「映画みたいだな」って思うんです。

チャ:あ、それも同感! 歌詞がシナリオだとするなら、歌手は「主演女優」だよね。松本氏はアテ書きが上手い脚本家だなあ、って、つくづく思う。松田聖子の一連の作品とか、斉藤由貴とか。

相澤:で、松本さんが書いた「男性から見た理想の女性像」を、本当はそうじゃない太田裕美さんが、そういう女性になりきって歌うことで、化学反応が起こるんですよ。

チャ:なるほど。それは太田裕美のポテンシャルの高さでもあり、松本氏が書く歌詞の「浸透率が高い」からでもあると。

相澤:そう、松本さんがそういう意欲的な詞を書きたくなったのも、裕美さんの声が圧倒的に素晴らしかったからじゃないかなと思うんです。

チャ:その通りだよね! もちろん、松本隆・筒美京平コンビの楽曲自体素晴らしいんだけど、それより何よりこの曲は、太田裕美の「かわいすぎる声」に尽きる!……もう、それでいいんじゃない?(笑)

相澤:同感でございます(笑)。で、太田裕美さんについては、ぜひ取り上げたい曲がもう一曲あるので、来週はそれで行きませんか?

チャ:望むところだ! どんとこい!

……次回は、太田裕美『満月の夜 君んちへ行ったよ』について二人が熱く語ります。お楽しみに!

【チャッピー加藤/Chappy Kato】

昭和42年(1967)生まれ。名古屋市出身。歌謡曲をこよなく愛する構成作家。好きな曲を発売当時のドーナツ盤で聴こうとコツコツ買い集めているうちに、いつの間にか部屋が中古レコード店状態に。みんなにも聴いてもらおうと、本業のかたわら、ターンテーブル片手に出張。歌謡DJ活動にも勤しむ。
好きなものは、ドラゴンズ、バカ映画、プリン、つけ麺、キジトラ猫。

【相澤瞬/Shun Aizawa】

昭和62年(1987)生まれ。千葉県出身。懐かしさと新しさを兼ね備えた中毒性のある楽曲を、類い稀なる唄声で届けるシンガーソングライター。どこまでもポップなソロ活動、ニューウェーヴな歌謡曲を奏でる「プラグラムハッチ」、 昭和歌謡曲のカバーバンド「ニュー昭和万博」など幅広く活動。
好きなものは、昭和歌謡、特撮、温泉、うどん、ポメラニアン。