佐世保市長選まで1年 現職の「出馬確実」見方 大勢 2期連続無投票の可能性も

 佐世保市長で3期目の朝長則男氏(69)は29日で任期満了まで残り1年となる。朝長氏は来年4月の統一地方選で実施される市長選への出馬を表明していないが、国際クルーズ拠点整備など大型事業はいずれも道半ば。周囲は「出馬は確実」という見方で一致する。対抗馬の動きは見えず、市長選で初めて2期連続の無投票となる可能性も出ている。
 14日昼。朝長氏は九十九島を望む俵ケ浦半島にオープンする軽食店の内覧会に駆け付けた。市はこの近くに大規模な「観光公園」を整備し、クルーズ客の受け入れ先とする方針で2020年度に完成させる。「頑張りましょう」。地元住民らに声を掛ける朝長氏の姿は、市政のかじ取りを続ける意欲をにじませた。
 朝長氏は市議、県議、市長と選挙で9戦無敗。強さを支えるのは「国会議員以上」と評される後援会の組織力だ。会員は市内の有権者数約21万人(3月現在)の半分近い10万人に上るという。衆院選長崎4区では毎回フル稼働して元防衛副大臣の北村誠吾氏を支援。対立候補を振り切る原動力となっている。
 朝長氏は取材に対し4選出馬について「まだそういう時期ではない」と白紙を強調する。ただ、国際クルーズ拠点整備や統合型リゾート施設(IR)誘致など大型事業の多くは“4期目”に正念場を迎える。複数の市議は「自らの政策を見届けるためにも続投したいはず。対抗できる力を持った候補もいない」とみる。
 ただ、3期12年の長期政権で“ひずみ”がないわけではない。観光政策ではクルーズ誘致に傾倒する姿勢に地元経済界から「地域振興につながるのか」という疑問も出ている。
 また来春には70歳を迎える。市長選出馬を初めて表明した06年の会見では「(首長は)4選になると多選の弊害が出る。3期が限度と思う」と指摘。4選出馬が濃厚とみられた当時現職の光武顕氏をけん制し、世代交代の必要性を訴えた。その後、光武氏は高齢を理由に不出馬を表明。「朝長氏は真逆の立場になった。出馬にはそれなりの説明が必要だろう」と光武氏の支持者は口をそろえる。
 こうした中、昨秋の衆院選長崎4区で落選した元防衛大臣政務官の宮島大典氏を推す声もある。宮島氏は取材に国政への関心を示しつつ「いろいろな声を聞き、(他の選択肢を)勘案する」と含みを持たせる。
 対抗馬の動きが見えない中で、市民からは無投票の弊害を懸念する声も出ている。70代女性は「選挙がなければ現職の評価も政策論争もできない。行政運営でおごりや緩みが生まれないだろうか」と指摘する。

来年の佐世保市長選まで約1年。現職の朝長氏は態度を明らかにしていないが、クルーズ拠点整備やIR誘致などの課題が残り、出馬に意欲的とみられる(写真はコラージュ)

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