ビジネスで藤沢に元気を【1】 仕事も畑も確かな根を 藤沢市

「八〇八」 中越節生さん藤沢市の畑で採れる無農薬野菜を、善行駅前の自店で販売。今取り組んでいるのは菊芋の加工品。最近菊芋チップスが完成した

 地域の課題をその土地の資源を使ってビジネスの手法で解決するコミュニティービジネスは、価値観や生き方が多様化した今、注目される新しい仕事の形だ。藤沢市では店舗の賃借料や改装費用に補助金を出すなどの支援で、様々なビジネスが誕生している。地域に生きる姿を追った。

無農薬野菜を手頃な価格で

 「地元の野菜を地元の人に食べてほしい」との思いで、自前の畑や仲間の畑で採れた無農薬野菜を善行駅前にある自店「八○八(やおや)」で販売している中越節生さん(47)。高くて買えないと感じる無農薬野菜のイメージを変えたいと、価格も手頃だ。「買う人が増えれば、藤沢で農業をやりたい人も出てくる。休耕田の解消にも繋がり、無農薬なら環境にも優しい。良い循環を生みたい」と意気込む。

 会社員生活を辞め、千葉で農業を始めた中越さんは、震災後、藤沢に移り住んだ。店を駅前に作ったのは、「畑は遠くて誰もが気軽に買いに来られない」との理由から。収入が農業だけとなるリスクを避けるため、飲食店も併設。昼間は自前の野菜を使ったランチやカフェ、夜はお酒も飲める“農民バル”へと変身する。また野菜の販路は、市内の飲食店やスーパーなどへ広がり、「自分で開拓もしたが、藤沢で仕事をしていくなかで口コミや紹介で増えた」と説明する。

 中越さんは、千葉で畑を借りるときに貸し手が見つからず苦労した経験がある。「だから就農したい人が、お酒でも飲みながら気軽に相談ができたらなと。収入面での心配もあると思うが、この店が販路の一つとして挑戦を後押ししたい」とも。

 「畑もコミュニティービジネスも同じ。しっかりと根を生やせば、簡単に倒れることはない」と中越さん。まずは地元を第一に、地元の人が喜ぶことを。4月に組織を法人化し、「根をはれたので、これからは加工品作りなどにもチャレンジしたい」と展望を話した。

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