県警の田村さん医学博士号を取得 DNA鑑定に新薬有効の実証で

 新薬によるDNA鑑定の有効性を裏付ける研究活動で、県警科学捜査研究所の田村友紀・主任研究員(34)が今春、東海大で医学博士号を取得した。医学博士の学位取得は県警科捜研で2人目。鑑定精度の向上を期待されながらも、有効性が実証されていないとして、国内で進んでいない新薬活用に道を開く研究成果で、注目される。

 田村さんは藤沢市出身。昭和薬科大薬学部を卒業後、2007年に県警に技術職員として採用された。以来、科捜研で現場の遺留物のDNA鑑定に取り組む傍ら、09年から東海大で、DNA型から血縁関係を推定する研究を重ねてきた。

 DNA鑑定では、採取した血液や毛髪などから一人一人異なる塩基と呼ばれる有機化合物の配列を解析し、個人を特定する。国内では現在、15カ所の配列を解析する手法が一般的だが、海外で近年、20カ所程度を調べられる新薬が開発された。より多くの識別情報が得られ、精度が高まるとして米国ですでに採用されている。

 国内の捜査機関では活用されていないが、田村さんは新薬の不確定要素を考慮したコンピューターシミュレーションを反復。その結果、「不確定要素の影響は限定的。新薬を使えば、血縁関係を推定する確度が従来の最大70%から90%程度に高まる」との結論を導き出した。研究成果をまとめた論文はドイツの学術雑誌に掲載された。

 田村さんは「身元不明遺体が多数出る大災害は、首都圏でもいつ起きるか分からない。せめて、亡くなった人が家族の元に戻るため、今回の研究が役立てば」と話す。

 研究活動の魅力を「分からなかったことを突き詰め、理解できるようになる達成感」と説明。寸暇を惜しんで続けた研究にひと区切りを付けた形だが、同時に新たな謎が生まれる世界でもある。「より確実な鑑定法を模索し続ける」。旺盛な研究意欲が尽きることはない。

東海大で医学博士号を取得した県警科学捜査研究所の田村友紀主任研究員

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