インディ第4戦:雨に翻弄されたレースをニューガーデンが制す。琢磨は8位入賞

 22日にバーバー・モータースポーツパークで行われた決勝レースインディカー・シリーズ第4戦アラバマグランプリは雨のため赤旗中断となり翌日に順延。23日に再開されたレースは、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が勝利した。

 シリーズ第4戦は今年初の常設ロードコースでのレース。ユニバーサルエアロキット装着マシンはストリートより速度が高いいわゆる“サーキット”でどんな走りを見せ、誰が、あるいはどのチームがセッティングでのアドバンテージを手に入れるのかに注目が集まった。

 金曜にプラクティスが2回、土曜日にプラクティス1回と予選が行われ、それらはすベてドライコンディションだった。チーム・ペンスキーがペースセッターで、ウィル・パワーが1回、ジョセフ・ニューガーデンが2回セッショントップを獲った。

 彼らに続くスピードを見せたのは、シュミット・ピーターソン・モータースポーツとアンドレッティ・オートスポート。エド・カーペンター・レーシング、デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァンも上位につけていた。

 レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨は予選前までの総合順位が11番手で、チームメイトのグラハム・レイホールも13番手と苦戦を強いられていた。

 予選セグメント1のグループ2でトニー・カナーン(AJフォイト・レーシング)がクラッシュ。大半のドライバーたちがレッドタイヤを使わないうちにセッション終了となり、その時点まででトップ6にいたドライバーたちの多くが新品レッドを予選ファイナルに使える状況となった。

 グループ1で戦った面々は明らかな不利に追い込まれたわけだ。しかし、ファイナルに進んだ中からポールポジションを獲得したのは、ファイナルで投入できる新品レッドを持っていなかったニューガーデンだった。2セットのレッド両方を使って攻めまくり、ファイナルラップで先輩チームメイトのパワーを逆転してPPを獲得して見せた。

 パワーは大いに落胆。決勝レースが始まる前に彼らの戦いには決着がついていた。すでにフェニックスで1勝を挙げているニューガーデンには精神的な余裕は大きくあり、バーバーでのレースがフルウエットコンディションとなっても自信満々の走りでトップを守り続けた。

 パワーはベテランらしい粘りで逆転する戦いを目指すべきだったが、雨の中でミスを冒し、16周目にクラッシュした。それもストレートで。予選3番手だったセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・バッサー・サリバン)に並びかけられた直後、水たまりに足を救われてスピンし、ピット側コンクリート・ウォールに激突。優勝、そして上位フィニッシュのチャンスを自ら消滅させた。

 レースはこの後、ドライバーたちの視界確保も不十分ということで22周で赤旗中断。明る月曜日に23周目から再開されることになった。

■翌日に順延されたレースも雨に翻弄

 月曜日は朝から快晴。セッティング変更、タイヤ交換、給油が許可され、ドライコンディションでのレースは始まった。前日にウエットレースとしてスタートしているため、90周のレースには2時間ルールが適用された。長いフルコースコーションもあって前日のうちに40分以上を使っており、残り1時間20分ほどで争われる。

 新品レッドを装着してニューガーデンはスタート。2番手以下にすぐさまさをつけた。10秒以上まで差を広げたのは、2番手以下が1ストップでのゴールを目指して燃費セーブをしていたためもあった。

 ブラックにスイッチしてもニューガーデンの速さは変わらず、逃げ続け、差も広げていった。そこへ雨が降り出し、レースの行方はわからなくなった。

 ニューガーデンは素早くレインタイヤに交換。チームは気象情報を集め、レースはゴールまで雨のまま続くと判断したのだ。

 逆にブルデーとスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)はスリックでの走行続行にチャンスを見出そうとした。

 雨になってペースも落ち、1ストップで走り切れる可能性も大きくなっていた。特にブルデーのペースが素晴らしく、チームの作戦と判断力、そしてドライバーの優れたウエットでのパフォーマンスでシーズン2勝目を飾る可能性も見えた。

 しかし、ゴールを前に雨は強まり、驚異的マシンコントロールを見せていたブルデーたちもスリックで走り続けるのが難しくなった。ハンター-レイ、ディクソン、ブルデーの順でピットに向かい、この中でウエットでのスリック走行を最も短くしたハンター-レイが2位でのゴールを果たした。

 ブルデーとディクソンによるバトルはゴールまで熾烈を極め、2台はサイド・バイ・サイドでゴールラインへと飛び込んだ。ブルデーが0.0871秒の差で5位、ディクソンは6位フィニッシュとなった。彼らより早めにレインタイヤを履いたジェイムズ・ヒンチクリフとロバート・ウィッケンスのシュミット・ピーターソン・モータースポーツコンビが3、4位でゴール。

 ニューガーデンは、「マシンが非常に良く、今日のドライでの戦いもいい走りができた。シーズン序盤にして2勝目を挙げることができてうれしい。昨日からの雨で路面のラバーが流れ去っていたのでレッドの新品でスタートすることにしたが、大きな差をつけてレース終盤を迎えることができた」

「ところが、そこへ雨が降ってきた。ミスを冒せば、大差のリードを持っていた僕らはとてつもないダメージを受ける。かなり精神的にキツかった。しかし、こうして優勝できた。レインタイヤへのスイッチが早かったが、その判断も正解だった」とニューガーデンは喜んでいた。

 琢磨は8番手スタートから1ストップ作戦を選んだが、序盤のレッドタイヤ装着で上位進出できなかったことで戦いは苦しくなった。終盤の雨は彼にもピットストップを求めることとなり、燃費セーブは意味をもたなくなり、レース再開時のスタートと同じ8位でのゴールとなった。

「今回は雨のレースで18位から8位まで順位を上げたところが良かった。予選の不運を跳ね返し、8位でゴールできた。決勝でのマシンはまだ自分たちの目指す実力を発揮していない。次戦のインディアナポリスでは今までとは違う考え方によるセッティングをトライすることも考えられます」と琢磨。

 常に優勝争いに加わることを実現可能な目標としてチームを移籍し、シーズン開幕を迎えた2017年インディ500チャンピオンとしては、ここまでの4レースでの苦戦はまったくの予想外。次のインディカーグランプリまでにロードコース用セッティングの大幅な底上げを成し遂げたいところだ。

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