【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(25)】〈富士鉄鋼センター〉需要増見据え「生産弾力性」確保 構内物流改善、人財育成も強化

 橋梁や建築鉄骨向けを主体とする建材型厚板シャー大手の富士鉄鋼センターは、1968(昭和43)年の設立からちょうど50年。その歴史をひも解くと…。

 設立の翌年に当時都内(月島と砂町)で事業を手掛けていた老舗シャーの鋼板剪断から商権を譲り受ける。70(昭和45)年に、新設した千葉工場(新港)に移転した。

 2003(平成15)年には君津製鉄所構内に全面移転。厚板ミルと連携した一体運営という現在の事業スタイルを確立した。

 12(平成24)年には青柳鋼材興業の切板事業を譲り受け、新たに船橋事業所(千葉県船橋市)を開設。君津との2拠点体制としたが、その3年後(15年)には船橋での操業を停止し、君津に加工集約する。

 これを機に船橋の一部設備を改良して移設。老朽設備と入れ替えて加工能力や生産効率を向上させたほか、同時期に廃業した山惣熔断からは商権の一部が移管され、現在に至る。

 富士鉄鋼センターは、建材型では新日鉄住金の関東地区における唯一の直系シャー。君津の厚板工場と直結しており、受注状況に応じた最適在庫管理と柔軟かつ弾力性のあるデリバリーが可能だ。

 品質面でも、原板品質情報のフィードバックや反転設備などの借用、平坦度矯正などがタイムリーにでき、製鉄所ルールによる高度な安全・防災対策や管理レベルも、客先の信用信頼につながる。

 敷地約9600平方メートルの建屋内にはレーザやプラズマ、NCガス溶断機のほか門型穴あけ&罫書きマシンや丸鋸、開先、R面取り機といった各種加工設備を保有する。

 2年後の東京オリンピック開催を控えた首都圏インフラ整備などの建設需要増を見据え、昨年には設備の配置替えや置場面積の拡張による構内物流改善を実施。具体的にはプラズマ2台を1台にしてレール延長したほか、フレームプレーナを移設して次工程である手切り定盤と一貫させた。既存設備の操業度を高め、受注増の際の生産弾力性を引き上げている。一部の職場で昼夜2交代勤務を実施していることも、高稼働率につなげている。

 さらにはフレームプレーナの移設跡地を現在は置場として活用しているが、将来的には穴あけや開先などの二次加工強化を視野に入れる。客先であるファブリケータからの二次加工ニーズは高まる傾向にあり、品質要求や納期要請も高度化する。この流れにキャッチアップしていく姿勢だ。

 船橋集約時に実施した経営再建が奏功して直近3年間は黒字を維持。この基盤を盤石にするため「生産計画精度向上対策」を、親会社とも連携しながら本格的に着手し、成果に結び付けている。

 ハード(設備)面に加え、ソフト(人、システム)面でも目標管理や人事評価、会社の求める人財育成といった制度を充実し「人づくり」に力を入れる。小集団活動を活性化させ、ボトムアップによる生産性向上はもちろん「やる気」の醸成にもつなげている。システム更新にも近々着手する計画だ。

 足元の切断量は月産約2千トン。実は、設立50年間での累計総出荷量がちょうど400万トンに達したという。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

 企業概要

 ▽本社=千葉県君津市君津(新日鉄住金君津製鉄所構内)

 ▽資本金=4億9千万円(新日鉄住金の出資比率51%)

 ▽社長=大住昌弘氏

 ▽売上高=約30億円(18年3月期)

 ▽主力事業=建材(橋梁・建築鉄骨)向け厚板溶断加工・二次加工

 ▽従業員=約70人

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