「バラバラの死体を戦車でつぶした」米国務省が北朝鮮を告発

北朝鮮の非核化はもちろん重要だが、人権侵害はどうするのか――27日の南北首脳会談と、5月か6月に予定されている米朝首脳会談を前に、世界各国の北朝鮮ウォッチャーからこのような声が上がっている。

そんな中、米国務省は20日、世界各国の人権状況に関する2017年版の年次報告書を発表した。

同報告書は北朝鮮について、2017年2月にマレーシアで起きた金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏暗殺事件に触れ、「北朝鮮政府による恣意的で違法な殺人が多数、報告されている」と批判。さらに、北朝鮮の国民が拷問や強制労働など「報告書が扱うほぼ全ての項目で政府による甚だしい人権侵害に直面」していると指摘した。

同報告書は北朝鮮国民に対する人権侵害について、脱北者やNGOの報告をもとに、いくつかの事例に言及している。

たとえば、2013年8月、煽情的なビデオを撮影したとして芸術団メンバーらが処刑された件については、「対空砲で銃殺した後、死体を戦車で踏みつぶす残酷さを見せ、この場面を学生たちに公開した」と指摘している。

これは、大口径の機関銃で撃たれ原形をとどめない死体を、戦車で轢いて、完全に潰してしまったという意味だ。この件でどのような処刑方法が取られたかは諸説あるのだが、国務省はこの説を「信ぴょう性アリ」と見ているのだろうか。

また、NGOによるアンケートの結果として、脱北者の64%が強制的に残忍な処刑場面を見せられたと言及。

さらには北朝鮮には少なくとも182カ所、最大で490カ所の収容所および拘禁施設があり、そこではとくに女性収容者に対する絶え間ない性的虐待が行われているとしている。

サリバン国務長官代行は記者会見で「米国は、北朝鮮の核問題と同じレベルで人権問題も懸念しており、過去1、2年の間に、収容所内における虐待などの人権問題に取り組む委員会とNGOを支援してきた」と説明。そのうえで「北朝鮮の核問題を解決するために、人権問題への関与を縮小することはない」と強調した。

同報告書は、日本人拉致問題にも言及しており、これもまた、国際社会においては北朝鮮における人権問題の一部分としてとらえられているのだ。

南北首脳会談と米朝首脳会談をにらみ、日本政府からも、この報告書くらい強いメッセージが出た方が良いのではないだろうか。

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