「米国に屈服するのか」「暮らし良くなれば」核実験停止に北朝鮮国内で様々な声

北朝鮮は、20日の朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会で、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を中止し、咸鏡北道(ハムギョンブクト)吉州(キルチュ)郡豊渓里(プンゲリ)にある核実験場を廃棄すると決定、発表した。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、この決定について北朝鮮国内からは肯定的、否定的な相反する反応が出ていると報じた。

労働新聞と朝鮮中央テレビでこのニュースを知ったと語る平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、住民たちは首を傾げているとして、否定的な反応が出ていることを伝えた。

「党は今まで数十年間、『核強国を建設してこそ共和国(北朝鮮)の尊厳が守れる』と宣伝してきたのに、急に核開発をやめたら米国や国際社会の圧力に屈服したことになるのではないか。人民生活の向上のためとは言うが、政府がそんなことを言ったためしがない」(情報筋)

また、中国と国際社会の制裁で生活が苦しくなっているが、核実験の中断と核実験場の廃棄だけで、制裁解除に持ち込めるのかと疑問を呈した。一方で、今回の決定のことについて一般住民はよくわかっていないとも伝えた。

一方で、平壌市民は今回の決定を概ね肯定的に受け止めているようだ。

中国丹東にやって来た平壌在住の情報筋は、「本当に核を廃棄するのかよくわからない」としつつも、今回の決定に好意的な反応を示した。

「北朝鮮の台所事情は、即時制裁緩和と海外投資が求められるほどの切実な状況であることは確かだ。多くの平壌市民は、北朝鮮が2003年に核拡散防止条約(NPT)から脱退せず、米国や国際社会から軽水炉と重油を受け取っていれば、今よりはるかにいい暮らしができていただろう」(情報筋)

平壌ですら電気供給と食糧配給が滞りがちで、体制を下支えする平壌市民の世論すらよくない状況だ。また、ひどくなる一方の貧富の格差で、庶民は高級幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)に反感を持っている。

「平壌市民は、北朝鮮が核を放棄して、米国や南朝鮮と交流するようになれば、経済強国になれることをよく知っている。最高尊厳(金正恩氏)が南朝鮮の経済的な発展を素直に認め、北南交流の門戸を開く英断を下せるだろうか」(情報筋)

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