「富貴楼」来月以降解体へ 長崎市景観審議会 委員ら「やむなし」

 長崎市上西山町の老舗料亭「富貴(ふうき)楼」が老朽化に伴い解体予定であるのを受け、市は25日、市景観重要建造物としての指定を解除する方針を市景観審議会(村田明久会長ら委員15人)に諮り、委員らは「残念だがやむを得ない」と理解を示した。これで5月以降に解体着工の見通しとなった。
 建物は国の有形文化財などにも登録されており、その取り消し手続きも進んでいる。市は建物の3Dデータを記録保存する方針だ。
 指定解除前の審議会の意見聴取は市条例に基づく措置で、市内で開いた。委員からは解体に理解を示す一方、歴史的・文化的に価値が高いとして「なくなるのは悲しい。後世に伝えるため現地にモニュメントを造れないか」との意見が上がった。市景観重要建造物の指定解除は初めてとなるが「今後ほかの建物も老朽化し同じことが起こると思う。市は解除して終わりではなく、国や県も含め何かフォローできないか検討してほしい」との指摘も出た。
 富貴楼は明治期以前の建築で、初代首相の伊藤博文が命名した。後継者不在などから昨年6月に休業し、保存活用へ譲渡先を探したが買い手が付かなかった。
 市によると、老朽化が著しく倒壊の恐れがあり、土地建物の取得と一定の改修だけで概算7億円が必要という。所有者は安全面への配慮から解体し、土地も更地にして売却を検討しているという。

富貴楼の解体を巡って意見交換する市景観審議会の委員ら=長崎市内

© 株式会社長崎新聞社