【きらりと光るわが社の〝得意技〟】〈布施金属工業〉金型不要のタタキ板金 1個から製作、アルミ製品に特化

 布施金属工業(本社・大阪府東大阪市森河内東2―7―27、社長・西堀一氏)は、アルミ専業の加工業者。「モノづくりのまち」として知られる東大阪で1956年に創業、設立が61年。草創期には冷却装置用銅パイプの曲げやアルミ製パン箱などの加工を、一時は銅やステンレスなども加工した。2010年からはアルミ専業へと業容を絞り込んでいる。従業員は5名。

 西堀広希専務は西堀社長の長男で大阪工業大学工学部卒業後、96年3月に入社。

 「当社はバブル時が年商のピークで1億2千万円ほど。変圧器のシールド(カバー)などを製作していたが主力取引先の中国への生産シフト、あるいは08年のリーマンショックなどが影響し、売り上げは年々落ち込んだ」(西堀広希専務)。

 転機になったのは10年の会社ホームページ(HP=http://www.fusekin.jp/)立ち上げ。これを活用することで新規顧客を獲得したことと、その際にアルミ専業へと事業を集中したことだという。HPでは同社独自の「タタキ板金」をはじめ、「アルミ溶接」「バフ研磨」「ロール巻き」などの加工技術を詳しく紹介。全国から試作品や単品製作の依頼がジワジワと増加。前期(17年6月期)年商は8千万円にまで回復した。

 創業から60年余経つが、移転はしていない。敷地70平方メートル弱の工場内には2メートルシャーリング・曲板機各1台、溶接機5台、ベンディングロール2台、バフ研磨機1台などを配置。タタキ板金の下に敷く各種金型も目を引く。工場長の横では若手職人2人がきびきびと働く。仕掛品では、ゴム手袋用金型(全体が円柱で先端部が楕円)、イタリア製バイクの特注タンクなどがあった。

 「タタキ板金は約20種の木づちを使ってアルミ板を叩き成形していく職人の技術。高価な金型が不要なことが大きな利点で、1個だけの試作品や小ロット製作に最適だと思う。技術伝承では機械加工ならQC工程表や指示書で引き継ぐことができるが、タタキ板金は若手職人が失敗しながら体得していくしかない」(西堀専務)。

 東大阪という地の利の良さを活用、表面処理(アルマイト加工)、へら絞り、機械加工(旋盤・フライス)、プレス曲げ、パイプベンダー、プレス抜きなどネットワークを駆使し、さらなる加工も可能だ。

 西堀社長は「新規顧客数は順調」と目を細める。西堀専務は「フセキン(布施金属工業)は今後、アルミに関する全てのお困りごとに対応できる『駆け込み寺』を目指したい。その先には誇り高い職人集団として、独自製品の創造を…」と意気込んでいる。(白木 毅俊)

© 株式会社鉄鋼新聞社