東京近辺の個性的な寺社風駅舎

JR青梅線御嶽駅=今年1月(上)と東京メトロ浅草線4番出入り口=昨年12月

 前回紹介した東京都青梅市のケーブルカー、御岳(みたけ)登山鉄道は、武蔵御嶽神社へのいわば表参道にあたる。ふもとの滝本駅へは、JR青梅線御嶽(みたけ)駅からバスに乗る。

 その御嶽駅の駅舎は個性的だ。入母屋造りで、出入り口のひさしの上には、なだらかな膨らみの破風。神社の拝殿さながらのたたずまいで、信仰の山に向かう参拝客らを迎える。寺社巡り好きの“巡礼鉄”としては、印象に残る駅舎の一つだ。

 大阪支社勤務当時にこのコラムで紹介したことがあるが、古社古刹が多い関西では大胆なデザインの駅舎を目にした。中でも大阪府貝塚市内を走る水間鉄道の水間観音駅は、屋根に五重塔のような本格的な相輪を備える。駅名が示すように、徒歩10分ほどの水間寺の参拝客の利用が多い。

 そこまでの“なり切りぶり”ではないにしても、東京近辺にも寺社風建築の駅舎はある。例えば東京メトロ浅草駅の4番出入り口。隅田川にかかる吾妻橋のすぐそばにある。これを駅舎と呼ぶかは議論があるかもしれないが、地下への階段を覆う屋根は朱色の柱に支えられた切妻造の神社風。

 東京の下町随一のにぎわいを見せる浅草界隈は、三社祭で有名な浅草神社や浅草寺など、寺社も多い。御朱印ブームの中、ご朱印帳を手にした女性らの姿も目立つ。鉄道好きなら、1931年開業のレトロな松屋デパートビル2階のホームに電車が吸い込まれていく東武鉄道浅草駅も見飽きない。

水間鉄道水間観音駅=2013年1月(上)と小田急片瀬江ノ島駅=今年1月

 ユニークなのは竜宮城を模した小田急江ノ島線の片瀬江ノ島駅(神奈川県藤沢市)。江ノ島にある江島神社にも竜宮城を模した楼門「瑞心門」がある。少し歩いて江ノ島電鉄に乗り継げば、古都鎌倉に直結。寺社巡りの起点にもなっている。

 江ノ島の一帯はマリンスポーツが盛んで、参拝客のほかにもレジャー客の利用が多く、駅舎を背に記念撮影する光景がいつも見られる。老朽化に伴い建て替えが予定されているが、新駅舎は今以上に竜宮城風になるというから楽しみだ。

 ☆美浦克教 共同通信社編集局企画委員

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