奪われる仕事

 大型ホームセンターでレジの列に並んでいると、セルフレジに案内された。客が自分で商品のバーコードを機械の画面にかざし、表示された額を投入して支払う方法を、店員が丁寧に説明してくれた▲買い物客をなるだけセルフレジに誘導したい-。そんな経営者側の事情がほの見える。人手不足対策か、人件費を削減したいのか、その両方か▲人の仕事は、近代以降の科学技術の発展に伴い、次第に機械に置き換わっていった。機械は人を重労働から解放しつつ、安価で効率的な働き手と化して、いつの間にか人が果たしていた役割を侵食していく▲今や人工知能(AI)が人の仕事を奪う可能性が現実味を持って語られる時代となった。AIの研究を進めている数学者、新井紀子さんの著書によると、10~20年後には働く人の半分が職を失う可能性があるという▲そんな未来を受け入れられるかどうか、私たち自身が問われる。機械やAIに職を奪われたくないと多くの人が思うだろうが、一方、お金を支払う消費者としては、コストをそぎ落とした安い品やサービスを求めたくなるのも本音▲買い物の際、人と対面するやりとりを選ぶか、機械の画面を相手にするか。ささいな選択のようで、私たちは未来の職の在り方に一票を投じているのかもしれない。(泉)

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