【岡谷鋼機の経営課題】〈岡谷篤一社長〉中計達成へ新分野開拓も 「市場の変化、ビジネスチャンスに」

 岡谷鋼機は、鉄鋼事業を中心に業容が拡大し、前2月期決算では過去最高の利益を確保。現行の中期経営計画「Gih―2020」(5カ年)の経過目標である今年度の業績目標を1年前倒しでおおむね達成した。最終年度に掲げる売上高1兆円、純利益200億円達成に向け、鉄鋼をはじめとする各部門のブラシュアップを図るとともに、IoT、AI市場などを駆使した新分野開拓にも力を入れる。岡谷篤一社長に今期の展望と経営課題などを聞いた。(片岡 徹)

――前2月期決算は非常に好調でした。

岡谷鋼機・岡谷社長

 「鉄鋼事業を中心に伸びた。鉄鋼セグメントでは、営業利益が前期比48%増の61億円となった。国内のほか、海外もおおむね堅調だった。鋼材市況の上昇に加え、販売数量も増えた。建産機などは、かつてない好調な受注状況。この流れを今期も引き継いで環境は良いとみる。しかし、細かな目標値は半分程度しかクリアできていない。営業面のさらなる強化や、グローバルでの人材育成を進め、最終年度の目標達成に向け取り組みたい」

――足元の状況、今期の事業環境をどうみるか。

 「3~4月の状況を見ても、それほど悪くない。基調はおおむね強く、今期も堅調に推移するのではないかとみている」

――通商問題などもクローズアップされています。影響などは。

 「先行きが見通しにくい状況も確かにある。今後、市場が変化することも十分に考えられるが、変化するならするで、その場合の当社の役割というのが必ずある。それをトレンドの中できちんと捉え、ビジネスチャンスにもつなげたい」

――国内の商社再編も進んでいる。

 「これも、自社の役割をきちんと把握することが大事だ。まず、お客様にきちんと商品をお届けすること。そして、鉄鋼メーカーさんと情報、戦略を共有し、国内外での協力関係を維持・発展させいていくこと」

 「お客様のニーズをよく聞き、機械や化成品、非鉄金属などの扱いを発展させることも大切」

――鉄鋼関連では、岡谷スチールや岡谷特殊鋼販売、空見スチールサービスなどの機能もあるが。

 「当社としてのスタンスは、従来から少しも変わっていない。中村鋼材の子会社化も含め、当社グループとしての最適化を常に考え、実現していく」

――人手不足なども顕在化しています。

 「ものつくりを取り巻くそうした課題について、当社が積極的に取り組み解決策を提案するようにしなければならない。どうしたらお客様の生産性向上、効率化に貢献できるのか。産業資材分野の知見や営業力を鉄鋼事業との連携につなげ、ロボットの普及やAI化への対応などをビジネスに取り込みたい」

――具体的な取り組みは。

 「例えば、竹中工務店、トピー工業と共同で開発した全方向クローラー型搬送支援ロボット『クローラーTO』などがある。建設現場の人手不足を背景に、作業員の負担を軽減する装置として注目が集まり、成約実績につながっている。現場を知る商社の強みを生かし、今後も生産現場での貢献を通じて社会に貢献できる営業活動、商品の開発・普及を推進していきたい」

――働き方改革の進捗は。

 「水曜はノー残業デーとしているし、会議は立ちテーブルを利用しスタンディングで行い効率化に務めている。また、時間差出勤、長時間労働を避けるためグループ会社を含めシステム化を進めている。今後は、休暇の活用拡大や一定期間内に休暇を確実に利用する体制をさらに整備する必要がある」

――来年、創業350年を迎えます。

 「これまで続けてこられたことに対し、お客様、関係各位に本当に感謝したい。今後も、しっかりと稼ぎ、社会に還元できる企業の実力を養いたい。毎年行っているチャリティーコンサート(今年は7月31日に名古屋・金山で開催)を継続したいし、大学生などの育英、奨学、研究助成を行う真照会(公益財団法人)も100周年を迎え、さらに活動を活性化していきたい。また、社会貢献活動の大切さを全社員がよく認識し、主体的に行動する企業風土を醸成したい」

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