【中国地区最大規模のコイルセンター・紅忠サミットコイルセンターの課題と展望】〈田中敬也社長・小柴光弘副社長に聞く〉複数工場統合で現場力向上 加工領域・カバー地域拡大生かす

 伊藤忠丸紅鉄鋼と住友商事グローバルメタルズは両社傘下の旧広島スチールセンターと旧サミットスチールの中国地区の一部拠点を統合し、4月1日付で「紅忠サミットコイルセンター」が誕生した。年間販売量約40万トンと中国地区最大規模のコイルセンターとなった新会社のかじ取り役を託された田中敬也社長、小柴光弘副社長の両代表に、展望・課題を聞いた。(小田 琢哉)

――新会社の概要から。

田中「製造拠点は旧広島スチールセンター本社第1、第2工場だった西条工場(広島県東広島市)と、旧サミットスチールだった呉工場(同県呉市)、海田工場(旧山村工場・同県安芸郡坂町)、山口工場(山口県山口市)の4拠点・5工場。本社機能は西条工場に。営業所は、本社と広島の2拠点に置いた。人員は現場も含め126人。年間販売量は約40万トン、年商110億円の規模となる」

――スタートの感触は。

小柴「統合1カ月強前から経営・製造・人事総務・財務・システムの各分科会を作り、広島スチールセンター、サミットスチールに加えて両親会社の関係者が集まって協議し、かなり駆け足で詰めてきた。新会社として何をいつまでに進めていくか、6月ごろまでに検討を重ねたい。実際に統合会社が走り出し、これからがマネジメント手腕の見せ所となる。我々二人で社内をつぶさに知悉・掌握した上で、ベクトルを合わせていく」

田中「両社の融合が一大課題だが、全ての会社規程を一気に一本化することは難しい。特に人事・総務、給与体系は関係者が満足いくよう時間をかけて決めていく考えであり、まずはシステム統合が急務だ」

――統合メリットは。

田中「広スチ2工場と旧サミット3工場の統合で、1+1=2プラスアルファを狙う。経営方針は(1)安全は最優先、最重要事項として取り組む(2)品質第一(3)顧客第一の方針で臨む。この3点が担保できた上で生産性向上や歩留まり向上、コストダウンに取り組む。広島スチールセンターは薄物、サミットスチールは厚物主体で薄物も、と対象レンジが増えることで1社では取りこぼしていた分野も可能となる。西条・呉・海田・山口に工場を持つことで中国地域の要所を押さえ、カバーできる地域も広がる。副資材の調達や管理体制強化などの統合効果の表れはこれからで、今は経営陣が統合会社の実体を把握して、課題を抽出しながら今後の計画を立てていく段階だ」

――現時点での設備投資計画は。

田中「統合前の能力増強計画については、新会社として再度検討していきたい。まずは老朽設備を維持するメンテナンス体制を見直す。新会社としてゼロ点に立ち戻り、基本に忠実にメンテ計画を作り直す。その上で、各設備を全面更新か部分更新するかなど判断していく」

――高操業を支える安全面の施策は。

小柴「挟み込まれ事故の原因や回転体へのカバーや柵の設置状況など、外部から来たばかりの我々二人のフレッシュな目線で点検パトロールを重ねる。ヒューマンエラーを含めたヒヤリハット対策も慣れではなく、新たな気持ちで行う。今回の統合で複数の工場が一緒になったことにより工場の間をまたがって、互いに良い部分を勉強し合い、改善点は切磋琢磨することで現場の力を伸ばしていく」

――自動車産業における新会社の役割は。

田中「地場自動車産業界では、自動車鋼板の集中購買をつかさどるマツダスチールが中核的な存在。株主を同じくする兄弟会社でもあり、ブランキング、テーラードブランキング、スリッター、レベラーという機能を有し、当社はマツダスチールが補完できない部分を担う。マツダ以外の顧客に対しても、細部まで配慮が行き届く経営を目指すことで、顧客の要望に100%対応できる会社となりたい」

プロフィール

 田中 敬也氏(たなか・ひろなり)1981年早大政経学部卒、丸紅入社。98年丸紅米国会社に出向、マルベニメタルブランキング副社長、社長を歴任。2005年伊藤忠丸紅鉄鋼自動車鋼材部戦略チーム長、08年伊藤忠丸紅鉄鋼大洋州会社社長、11年広島スチールセンター社長、13年ユナイテッド・コイルセンター社長を経て今年4月現職。趣味は水泳とゴルフ(H12)。1958年12月10日生。東京都出身。

 小柴 光弘氏(こしば・みつひろ)1981年早大商学部卒。2005年住友商事入社、08年自動車鋼板事業部副部長、11年セルビラミナ・サミット・メヒカーナ社長、15年自動車鋼板・鋼管事業部長付などを経て、今年4月現職。ゴルフはH20程度。ランニングが趣味で、マラソン経験もある。昨年1年間は怪我に泣いたが、広島で徐々に再開中。1957年6月22日生。千葉県出身。

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