親が育てられない赤ちゃんどう守る 「ポスト」や「匿名出産」 各国で論議

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会場からの質問に答える各国の登壇者。左端は慈恵病院の蓮田健副院長=15日、熊本市中央区
赤ちゃんポストの在り方をテーマにした国際シンポジウムで報告をする米国のモニカ・ケルシーさん=14日、熊本市

 親が育てられない赤ちゃんを預かる「赤ちゃんポスト」に関する国際シンポジウムが14、15の両日、熊本市中央区の市民会館シアーズホーム夢ホールであった。11カ国の設置団体や研究者が事例を報告。運営方法や法整備のあり方、「出自を知る権利」との整合性など、直面する課題を議論した。

 「8年間で1400人」(韓国)、「1999年以降に1600人超」(南アフリカ)、「12年間で140人」(ポーランド)-。登壇者らは自らの国や施設での預け入れ状況を報告し、ポスト設置の必要性をにじませた。

反対の世論も

 報告によると、多くの施設が乳幼児の遺棄事件をきっかけに開設されていた。設置者が強調したのが、性犯罪などによる望まない妊娠や経済的な理由で、社会的に追い詰められた親子に寄り添う人道性。ドイツの設置団体は「親は(子を殺さず)ポストに連れてきた段階で、できる限りの責任を果たしている」と言い切る。

 一方で、「安易な子捨てや自宅出産を助長する」「親(出自)を知る権利が保障されていない」など、ほとんどの国で設置に反対する世論があることも浮き彫りになった。

 ロシアでは、ポスト設置を認める法案と規制する法案が、いずれも提出されたまま可決されていない。スイスでは92%の国民が賛成し地方政府も後押ししたが、当初は国が反対し、法整備はない。一定の法制度が整っているのは、米国など一部に限られ、各国でもポスト設置に対する見解は分かれている。

親の匿名性

 多くの設置団体は、ポストに親の情報や身元が分かる品を残すよう求めているが、「監視カメラは本人に向けない」(ロシア)など、親の匿名性を重視する傾向がある。

 ただ、匿名で預けられた場合、子どもは実親の情報を知ることができない。子どもの知る権利を担保するため、ドイツでは、相談機関には実名を明かし、病院では匿名で出産する「内密出産」が導入されている。14年に法制化され、実母の情報を「出自証明書」として公的機関が保管し、子どもが16歳になると証明書の閲覧を求めることができるという。17年夏までに約350人が生まれている。

 スイスにも同様の仕組みがあるほか、ロシアや韓国の設置団体も検討を進めている。

 現在、導入の可能性を模索している慈恵病院(熊本市西区)の蓮田健副院長は、視察したドイツの制度について報告。出自証明書の閲覧は親が拒否の申し立てができる点などを挙げ、「子どもにとって良い制度になるのか、まだ分からない」と懸念。「完璧な制度はなく、ポストか内密出産の『どちらか』ではなく『どちらも』必要ではないか」と提言した。スイスの設置者も「女性に選択肢を与えることが、遺棄や殺害を防ぐことになる」と語った。

当事者の声

 米国の設置団体代表モニカ・ケルシーさんは、73年に生まれてすぐ病院に置き去りにされ、養子縁組の両親に育てられた「当事者」として登壇。母親が受けた性犯罪で生まれたことを8年前に知らされるなど、経験を赤裸々に語った。

 「望まない妊娠で人生を壊された人を助けたい」と14年、ポストの設置団体を設立。翌年にはインディアナ州が合法化し、これまで設置した2カ所に2人が預けられたという。

 米国では消防署などに赤ちゃんを匿名で預ける制度があるが、受け入れ関係者との対面が必要だ。ケルシーさんは「名前や住所を記すことを嫌がる人はいる。(米では)3日に1人の割合で子どもが遺棄されている。親を知らなくても、生きることの方が優先」と訴えた。(西島宏美、林田賢一郎)

(2018年4月27日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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