霞ケ浦導水訴訟和解 漁協側「まだ出発点」

対立10年、安堵の表情

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和解成立後に会見する那珂川漁協の添田規矩組合長(左から2人目)ら=東京・霞ケ関の司法記者クラブ

霞ケ浦導水事業を巡る訴訟は27日、東京高裁で和解が成立した。生態系や漁業へ悪影響を与える恐れがあるとして、那珂川流域漁協が工事差し止めを求めた仮処分申請から丸10年。「長かった」「ここが出発点」。国が漁協側の意見を尊重する枠組みが整い、原告らは安堵(あんど)の表情を見せた。

42の傍聴席が満席となった東京高裁812号法廷。「この和解が双方にとって有益なものとなるよう希望する」。都築政則裁判長の言葉に、県内3漁協の組合長が最前列で耳を傾けた。長く続いた法廷闘争が終わり、閉廷後は互いに握手を交わした。

「清流を守りたい」-。那珂川とともに生きる流域漁協の組合員らがいちずに求めてきたのは、補償ではなく、豊かな自然環境を後世に残したいという純粋な願いだった。

閉廷後に会見した那珂川漁協(城里町)の添田規矩組合長(75)は、今後はモニタリング調査の結果を踏まえ、毎年意見交換の場が設けられることから、「裁判所が言うようにまだ出発点。国と協議しながら、那珂川の自然とアユの漁獲高日本一を保っていきたい」と先を見据えた。

霞ケ浦の水でシジミにカビ臭が付くことを懸念してきた大涸沼漁協(茨城町)の坂本勉組合長(65)は「シジミ漁は若い世代が育ってきている」と強調。「後継者のためにも、国は調査結果とその情報開示について的確に対応してほしい」と注文した。

那珂川第一漁協(水戸市)の小林益三組合長(80)は「長かった。反対しようが(国には)放っておかれ、苦しい時代もあった」と、言葉を詰まらせた。和解を「うれしくはない。ただ、これ以上裁判は続けられない」と、苦渋の選択だったことをにじませた。

弁護団長の谷萩陽一弁護士は、和解条項を「漁業への影響を防ぎ、訴訟の目的を達成し得るもの」と評価。夜間取水停止期間の拡大などについて「漁協の主張を反映したものであり、重要な成果」と強調した。

国が和解案を受け入れたことに、「最終的な決定権は譲らなかったが、裁判所の説得もあり、他の条件はかなりのんでくれた。運用がどうあれ、何とか建設を進めたい考えなのだろう」と推察した。(戸島大樹)

★霞ケ浦導水事業
霞ケ浦と那珂川、利根川を地下トンネル(計約45・6キロ)で結び、水を行き来させる。霞ケ浦の水質浄化、那珂川と利根川の渇水対策、本県と東京、埼玉、千葉の4都県への水道・工業用水の供給などが狙い。1984年に建設事業着手。総事業費は約1900億円で、本県負担額は約851億円。計画変更を繰り返し、当初の完成予定は93年度だったが、現在2023年度。予算の約8割を消化したものの、工事の進捗(しんちょく)は約4割にとどまる。