1994年のリレハンメル・オリンピックに出場したフィギュアスケート選手トーニャ・ハーディングの半生に基づく映画だ。彼女のことは、スケートファンでなくても知っている人が多いだろう。トリプルアクセル(3回転半)を女子では伊藤みどりに次いで2人目、アメリカ女性で初めて成功させながら、“ナンシー・ケリガン襲撃事件”に関わったとしてフィギュア界を永久追放されたニュースは日本でも報じられたから。
本作は、そんな有名な実話を扱いながら、随所にインタビュー場面(俳優が演じている)が挿入され、モキュメンタリーを装うつくりになっている。しかも、主演は人気女優のマーゴット・ロビーである。要するに、あえてフェイクを強調したフェイクドキュメンタリー(ふうの劇映画)なのだ。
監督はクレイグ・ギレスピー。『ラースと、その彼女』『ザ・ブリザード』などで独特のコメディーセンスもVFXを生かす手腕も認められていたが、本作でその評価を決定づけた。スティーヴン・ロジャースによる主要人物の言い分の食い違いを生かした脚本もうまいが、何よりマーゴット・ロビーが体現するオリンピック級のスケートの描写に違和感がないから、ドキュメンタリーっぽさが際立ち、これ見よがしなフェイクが笑いへと転じているのだ。嘘っぽさと作り込みがリアリティーにつながるという逆転の発想が生んだ傑作である。★★★★★(外山真也)
監督:クレイグ・ギレスピー
出演:マーゴット・ロビー、セバスチャン・スタン、アリソン・ジャネイ
5月4日(金)から全国公開