春の褒章と叙勲(2018年・本紙関係の受章者)

 本紙関係の受章者は次の通り。

 【藍綬褒章】

 ▽金田敏雄氏(75歳、元日江金属社長)

 ▽榎本哲也氏(65歳、元日本磨棒鋼工業組合理事長、城北伸鉄会長)

 【黄綬褒章】

 ▽熊野幸雄氏(58歳、新日鉄住金広畑製鉄所生産技術部研究・品質管理室研究・品質管理係班長)=金属熱処理工

 ▽佐藤和敏氏(60歳、クボタ京葉工場勤労課工師)=機械修理工

 ▽塔筋孝氏(62歳、クボタ堺製造所本機生産技術課工師)=生産設備保全工

 ▽時松元信氏(58歳、新日鉄住金鹿島製鉄所安全環境防災部安全健康室主査)=製鋼工

 ▽平井正則氏(65歳、新日鉄住金大分製鉄所厚板部厚板工場厚板課シニアインストラクター)=熱間圧延工

 ▽山口順二氏(61歳、神戸製鋼所鉄鋼事業部加古川製鉄所製鋼部製鋼鋳造室専門技師)=鋳造工

 ▽吉本守雄氏(58歳、クボタ阪神工場製造技術課製造革新職長)=鋳物工

 【旭日重光章】

 ▽石原廣司氏(76歳、元古河電気工業社長、元日本電線工業会会長)

 ▽朝香聖一氏(75歳、元日本精工社長)

 ▽徳植桂治氏(70歳、元太平洋セメント社長)

 【瑞宝重光章】

 ▽中村利雄氏(71歳、元中小企業庁長官)

 【瑞宝中綬章】

 ▽根津利三郎氏(70歳、元経済協力開発機構科学技術産業局長)

 ▽井口泰孝氏(75歳、八戸工業高等専門学校名誉教授)

 【旭日小綬章】

 ▽御子柴隆夫氏(86歳、元日本鍛圧機械工業会会長)

 ▽山本厚生氏(77歳、元フジコー社長)

 【瑞宝小綬章】

 ▽上村良次氏(70歳、元近畿経済産業局産業部長)

 ▽長島英雄氏(72歳、元東北通商産業局長)

 ▽奥村曉氏(70歳、元資源エネルギー庁石炭部炭業課長)

 【旭日双光章】

 ▽菊池眞紀氏(77歳、元ポーライト社長)

 ▽久米徳男氏(79歳、元協同組合徳島県機械金属工業会理事長)

 ▽舩山秋英氏(74歳、元福島県鉄構工業組合理事長)

 【瑞宝双光章】

 ▽山下輝昭氏(70歳、元中国経済産業局産業部長)

 ▽横山敏明氏(71歳、元四国経済産業局産業部政策課長)

 ▽菊池則幸氏(70歳、元物質・材料研究機構総務部人事課長)

 【旭日単光章】

 ▽田中稔氏(72歳、元タナカテック社長)

 ▽橋本勝氏(80歳、元蔵前産業社長)

 ▽笹山勝紀氏(75歳、元ササヤマ社長)

 ▽多田敏雄氏(79歳、元岐阜多田精機社長)

 ▽中道武雄氏(75歳、中道鉄工社長)

 ▽中村謙治氏(75歳、元三和ニードル・ベアリング社長)

 ▽西村武氏(78歳、オリエンタルチエン工業社長)

 ▽橋本光蔵氏(80歳、元橋本鋳造所社長)

 ▽平林健吾氏(74歳、元サイベックコーポレーション社長)

 【瑞宝単光章】

 ▽干場武氏(74歳、金工品=東京銀器=製造業従事者)

 ▽野田みや子氏(65歳、元大同病院看護部長)

黄綬褒章受章者

平井正則氏/新日鉄住金・大分

新日鉄住金・平井氏

 新日鉄住金大分製鉄所の厚板工場で35年余りにわたり圧延ロールの整備に尽力してきた。

 圧延ロールの異常は圧延機の停止につながることもある。しかし、その原因はわずか数ミリメートルのロール疵という場合が少なくない。平井氏はロールの損傷を目視や非破壊検査で的確に把握。さらに必要最小限の研削量で疵や疲労層を完全に取り除いてしまう。設備の安定稼働を支えるために磨き続けた卓越技能だ。

 受章を聞いて「ただただ驚いている。上司や先輩、同僚の助言や応援があってこそ」。

 現在は同工場のシニアインストラクター。後輩には「先輩の仕事を引き継ぐのは当たり前。そこからいかに自分で工夫し進化させるかが仕事」と伝えている。

熊野幸雄氏/新日鉄住金・広畑

新日鉄住金・熊野氏

 勤続40年。一貫して電磁鋼板の試験研究に従事。その技能に卓越し、実験装置開発や実験精度の向上を通じて、世界最高特性の鋼板の開発・量産化に貢献してきた。14年には「現代の名工」に選ばれた。

 方向性鋼板開発における極小流量水素焼鈍試験の確立、無方向性鋼板ではハイブリッド自動車用の低磁場特性に優れた鋼板開発につながる実験など功績は多い。

 現在も研究・品質管理室の班長として世界トップの電磁鋼板開発に向けた試験に取り組むとともに、後継者育成に力を入れている。

 「やってみよう」を信条とする。部下にも「成功は喜びになる。失敗は経験になり財産になる」と挑戦心や努力を説く。

時松元信氏/新日鉄住金・鹿島

新日鉄住金・時松氏

 75年に入社し連続鋳造機の操業一筋40年余り。和歌山、鹿島の両製鉄所でビレット、ブルーム、スラブと全てのタイプの連鋳機を経験し、幾多の改善を成し遂げてきた操業技術の第一人者だ。

 大きな功績の一つが、不可能とさえ言われた鋳型の湯面を一定に保つ作業の自動化。鋳造の品質が飛躍的に高まり、造塊・分塊法に頼っていた鋼材も連鋳機で鋳込むことを可能にした。造塊・分塊法から連鋳法へと世界に先駆け切り替えを果たしてきた日本。その転換点を現場で支えた。

 後進の育成では実際に経験するのが難しい連鋳機操業の異常を模擬体験できる訓練用のシミュレーターを構築。若手社員の短期間での技能習熟に貢献している。

山口順二氏/神戸製鋼・加古川

神戸製鋼所・山口氏

 勤続42年、一貫して連続鋳造機の操業・建設に携わり、特殊鋼線材条鋼の神戸製鉄所でビレットの安定鋳造や連鋳比率向上など生産性を高めてきた。13年には「現代の名工」に選ばれた。

 昨年秋の加古川製鉄所への上工程集約に伴い、同プロジェクト専門係長として4年前から加古川に勤務。最新鋭のブルーム連鋳設備の建設と早期安定稼働に貢献した。2年前に定年を迎え、現在は専門技師として連鋳の安全・安定操業に向けた技能伝承を行っている。

 「問題意識を持て」が信条で、若手のヤル気を引き出し、後押しする。「計測機器や制御技術が進化しているが、現場担当者もそれに負けないよう五感を磨いていくことが安全・安定操業につながる」

佐藤和敏氏/クボタ・京葉工場

クボタ・佐藤氏

 京葉工場で設備保全部門と製造部門に携わってきた。設備保全では世界最大級の溶接能力を持つキュポラや京葉工場が世界唯一生産する9メートルダクタイル鋳鉄管の鋳造機をはじめとする基幹設備の製作・据付・改善活動を行うことで、同工場の量産技術を支えてきた。凝固時の冷却速度・収縮量が一定でない材質に合わせた処理加工技能に卓越。設備・機械系保全技能や5ゲン主義(現場、現物、現実、原理、原則)の知識を組み合わせることで数値化やマニュアル化が難しい作業を設備化し、人の判断によらない自動化や省人化を成功させてきた。新技術の開発、導入にも貢献し2件の特許を取得。品質・安全とコストを両立させた生産性向上活動では、京葉工場で並ぶ者はいない。

吉本守雄氏/クボタ・阪神工場

クボタ・吉本氏

 入社以来38年間、鋳鉄管の加工処理部門や購買部門、ムダ排除活動の5ゲン主義改善活動の指導、ティーザクス(自動車用ブレーキパットの原材料の一つ)の製造など幅広い業務に従事し、生産工程のすべてを熟知。その中でも鉄管の加工・仕上げ工程の機械化に関する技能は社内のみならず業界随一だ。

 小径ダクタイル鋳鉄管の自動加工処理、検査ラインを構築するなど各種自動生産設備の実用化を達成した。またティーザクスの生産では5年間焼成炉の設計開発に携わり、時間当たりの生産能力を80トンから130トンに向上させた。現在は、新型耐震管の製造ライン立ち上げやロボット技術の活用といった新規テーマに精力的に取り組んでいる。

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