【ニュースの周辺】金地金取引事業者6社、経産省が初の行政処分 犯罪関与への「疑わしい取引」について届出怠る、法令遵守の徹底促す

 経済産業省は、犯罪による収益の移転防止に関する法律に基づき、金地金取引事業者6社に対して初の行政処分を行った。個人が現金による多額の金地金取引を短期間に繰り返すという犯罪関与への疑わしい取引があったにも関わらず、行政庁への届出を怠っていたのが理由。今後も金地金取引の実態把握に努めるとともに、法令遵守の周知徹底を促す。

 犯罪収益移転防止法は、金融機関、クレジットカード事業者、宅地建物取引業者、宝石・貴金属などの取扱業者、郵便物受取サービス業者などが対象事業者となる。こうした事業者には取引時確認や確認・取引記録の作成および保存、行政庁への疑わしい取引の届出、取引時確認を的確に行うための措置(社員の教育訓練、社内規定の作成、必要な情報収集・分析など)の順守が求められる。

 金地金取引を所管する資源エネルギー庁鉱物資源課は昨年11月、金地金流通協会の加盟210社と非加盟の60社に対して金地金取引に関する任意調査を初めて実施した。昨今の金地金密輸の急増と、G8の合意に基づき設立された政府間会合「FATF(金融活動作業部会)」の第4次対日相互審査を2019年度に控えていることが背景だ。金地金密輸の摘発件数(財務省事務年度ベース)は14年度119件、15年度465件、16年度811件、17年度1347件と目に見えて増えている。政府はこうした反社会勢力の資金源になり得る取引に対して警察などの関係機関と連携しながら監視を強化しているところだ。

 FATFは、メンバー国・地域に審査団を派遣し、マネーロンダリング対策やテロ資金対策の法制、監督・取締体制などFATF勧告の遵守状況を審査している。日本は08年に公表された第3次対日審査において49項目中25項目で要改善という厳しい評価を受け、14年に指摘事項に対する対応の遅れから迅速な立法措置などを促す異例の声明を受けた経緯があり、関係当局は強い危機意識を持って第4次審査に臨む姿勢をみせている。

 今回、鉱物資源課が実施した任意調査(14~16年度の取引を対象)では270社のうち、約7割が回答。それらの報告書と書面調査を行った結果、6社に疑わしい取引の届出違反が認められた。6社には中小企業から大企業まで含まれているという。

 違反企業に対しては疑わしい取引の届出を速やかに行うことと、違反行為の再発を防止するため、社員に対する教育訓練のさらなる強化と規定の整備・見直し、取引時の確認など特定事業者としての義務を的確に履行するための措置を講ずるように行政指導を実施。また、同指導を踏まえ、各社が講じた措置を指定期日までに報告するよう、報告徴収命令も出した。

 鉱物資源課では、今後もアンケート調査の実施や関係団体などさまざまなルートを通じて法令の周知徹底を図っていくとしている。(相楽 孝一)

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