丹沢写す先駆者の遺作展 50年前の風景も 秦野で20日まで

 丹沢山山頂の山小屋「みやま山荘」を開設した登山家で、山岳写真家の故・岩田傳三郎(でんざぶろう)さん(1920~2016年)の遺作展が、秦野市堀山下の県立秦野ビジターセンター(県立秦野戸川公園内)で開かれている。気候変動などで現在は見られなくなった昭和40年代の丹沢の風景も記録されている。丹沢の先駆者の足跡を振り返ろうと友人が企画した。 

 岩田さんは戦前から登山に親しみ、戦後は小田急線渋沢駅近くの商店街で写真店を営む傍ら、1965年にみやま山荘をオープンした。山岳写真家としても日本アルプスなど全国の山々を巡り、作品は登山雑誌に掲載された。

 60年以上、親交のあった市内に住む弁護士の平野義耀(よしあき)さん(80)は「丹沢の名物のような存在だった」と振り返る。写真店の常連だった小室刀時朗さん(62)は「丹沢の第一人者。作品に光を取り入れて明るさと暗さを出すのが本当にうまかった」と話す。

 遺作展は平野さんや小室さんら友人たちが企画し、昭和40年代に撮影された作品を中心に40点を展示している。初代のみやま山荘や、丹沢山から見た富士山や大山、山頂付近のブナ林などをとらえた力作が並ぶ。

 また完全氷結した神ノ川の滝を人が登っていく場面をとらえた一枚も。「現在は温暖化の影響か、完全氷結すること自体が少なく、氷結しても人が登れるほどの厚みにならない。大変貴重な資料」(同センター)という。

 20日まで。入場無料。問い合わせは、同センター電話0463(87)9300。

在りし日の岩田さん

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