遺伝性疾患ADPKD「難病知って、対策を」 横浜市青葉区

 腎臓にできた嚢胞により、徐々に腎機能が低下していく遺伝性の難病「常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)」。近年、薬が開発されたことから治療が可能になったこの疾患について、昭和大学藤が丘病院所属で同大医学部助教の佐藤芳憲医師(39)=写真=に話を聞いた。

 ADPKDは、腎臓の尿細管という組織に液体の溜まった袋(嚢胞)ができ、加齢とともに増大する病気。先天性の疾患で、徐々に肥大化した嚢胞が正常な組織を圧迫し、血液中の老廃物や水分をろ過、排泄する腎臓の働きを低下させる。進行には個人差があるが、腎不全となり透析治療が必要になるケースや、脳動脈瘤などの合併症を引き起こすことも。嚢胞は数十年かけて大きくなるため、多くの場合、30〜40代頃までほとんど症状が表れないのが特徴。健康診断の血液検査などで進行した状態で発覚することが多いという。「腎機能低下の自覚症状は顕在化しにくく、『背中が張っている』など附随した症状を感じている人もいる」と佐藤医師は話す。

子への遺伝50%

 ADPKDは遺伝性の腎臓疾患の中で最も患者数が多く、日本では3万人が罹患。4千人に1人が発症すると推定され、透析療法導入原因の4位でもある。また、親が原因遺伝子を持っている場合、50%の確率で子に遺伝するという。しかし「遺伝すると知らなかった」「精神的な負担をかけたくない」などの理由から子どもに知らせていないケースも多い、と佐藤医師。一方で致命率が高いくも膜下出血などを引き起こす合併症のリスクは、比較的若い世代にみられるという。「20〜30代で起きることもあるので、可能性があることはお子さんに伝えてほしい。うまく説明できないなど心配なら、かかりつけの医師にまかせて」。また、30〜40代なら「まずは家族歴の確認を」と佐藤医師。親や身内に罹患者がいるか、透析を受けている場合はその理由の確認も大切だ。その上で、健診に加え超音波検査を受けることで早期発見につながるという。

「かかりつけ医に相談を」

 同疾患にはこれまで治療薬がなかったが、大塚製薬(株)が創製した新薬が2014年、病気の進行を抑制する初めての治療薬として、世界に先駆けて日本で承認された。指定難病のため、認定基準を満たせば医療費補助を受けることも可能だ。佐藤医師は「透析よりも患者さんへの負担は軽減される。自分だけで調べるには限界があるので1人で悩まず、かかりつけの医師に相談してほしい」と話している。

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