LINE乗っ取り詐欺注意 なりすまし横行

 無料通信アプリLINE(ライン)を介して、プリペイドカードなどをだまし取られる被害が後を絶たない。ライン利用者のアカウントを乗っ取って、その人になりすまし、家族や友人から金券を詐取する手口で、県警も2017年に30件以上の被害を確認している。ネット犯罪に詳しい識者は「不審なメッセージが届いたら、直接相手に電話するなど、ライン以外のあらゆる方法で相手に事実関係の確認を」と注意喚起している。

 「今忙しい?」-。横浜市内のIT企業に勤める男性(51)の元に、こんなライントークが届いたのは今年の元日。相手は海外にいるはずの取引先の重役だったが、「ちょっと手伝ってほしいんだけど?」「近くのコンビニでBitCash(ビットキャッシュ)カードを何枚か買ってきてほしいんだけどいいかな?」と矢継ぎ早に持ち掛けられ、求められるままに計8万円分の電子マネーに相当するカードを購入、利用に必要な識別番号を相手に送った。

 「正月からこんなことを言ってくるものかな?」。男性は疑問を抱いたというが、「代金は銀行口座に振り込む」との文言を信じて数日待った。しかし、一向に音沙汰はなく、だまされたと気付いた。

 警察に被害を届けようとも考えたが、「事を荒立てたくない」「相手に迷惑を掛けたくない」と二の足を踏んだ。家族に知らせても被害を責められるのではと思い、結局泣き寝入りせざるを得なかったという。

 無料通信アプリを提供するLINE(東京都)の担当者によると、利用者のアカウントを乗っ取る被害は2014年ごろから把握。対策は講じているものの、現在も毎月数百件の相談が寄せられると明かす。

 同社によると、現状は偽サイトや会員制交流サイト(SNS)などを使って、アカウント作成に必要な認証番号などを不正に入手し、乗っ取る手口が主流という。同社が対策を取るたびに、新手の手口が生み出される“いたちごっこ”が続き、同社は「被害に遭わないよう注意喚起していくしかない」。

 県警はこうした詐欺被害に関し、昨年は相談を含め34件を把握。捜査関係者は把握しているものについて「氷山の一角」とみる。被害額は数千~数十万円ほどで、無料通信アプリの普及に伴い被害に遭う年齢層や職業も多岐にわたると分析する。

 被害に遭った男性は「冷静に考えると、おかしいと思う部分がいくつかあったが、何となく信じてしまった。相手を助けたと思ったのに、だまされていたとは」と嘆く。情報セキュリティ大学院大学の湯淺墾道教授(情報法)は「常にやりとりしている相手が本人でない可能性を心に留めておくべき。ラインによる本人確認には限界がある。乗っ取り被害に遭わないためにはラインのID(識別符号)を使い回さず、IDを公開する場合は必要最小限にとどめる自衛策を」と呼び掛けている。

知人のアカウントを乗っ取った相手とのライントーク。計8万円分のBitCashカードをだまし取られた(画像の一部を修整しています)

© 株式会社神奈川新聞社