杉田電線、カーボンナノチューブ線材の量産技術確立

 杉田電線(本社・さいたま市岩槻区、社長・杉田幸男氏)は軽量・高強度なカーボンナノチューブ製の線材を開発し、量産技術を確立した。素材合成から線材加工までの一貫生産が可能。まずは脈拍測定装置など医療機器向けのセンサ部品として採用を目指し、将来的には航空宇宙関連のワイヤハーネスへの適用を視野に入れる。事業化は2018年内が目標で、杉田社長は「銅電線に次ぐ事業の2本目の柱にしたい」と期待している。

 カーボンナノチューブは炭素原子を六角形に結合したシートを、円筒構造に形成した物質。引張強度は銅の数十倍で重量は約7分の1となっており、導電性も有する。杉田電線の線材開発は岡山大学や東京工業大学などと共同。国や埼玉県から助成を受けながら実施した。

 材料には低コストで安定調達できるものを採用。加熱の温度や時間などを工夫し、ハンドリングしやすい二層構造のカーボンナノチューブを基板上に形成する技術を開発した。線材加工は基板から数百万本の繊維を連続で引き出しながら、撚り合わせて巻き取る工程。ナノレベルの微細な材料加工で、極めて厳密な条件設定が求められる。同社ではこれまでに電線製造で培った撚りや巻き取りの速度・張力調整などの技術を応用。同じ太さの線材を連続で1千メートル以上製造することに成功している。

 線材は20~50ミクロンの範囲で太さの制御が可能。実用化を目指す医療機器向けセンサ用途では、線材をシート状に織り込み接続端子などと組み合わせた展開を検討している。ワイヤハーネスでは航空宇宙などの特殊用途で軽さや強さに優れる特性を生かす考えだ。海外での拡販を目指しており、マーケティング会社のシダーマーク社(本社・東京都中央区)が販売に協力する。

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