広域避難場所を拡大 神奈川・茅ケ崎市、大規模な火災想定

 神奈川県茅ケ崎市は、大規模な火災が発生した際に逃げ込める市内の「広域避難場所」を大幅に拡大した。人口増加や社会環境の変化などを踏まえ、2017年度に見直しを実施。民間企業などの協力を得て、指定をこれまでの8カ所15施設から21カ所43施設に増やした。今後は避難標識を順次設置するほか、住民説明会を通じて広く周知していく。

 広域避難場所は、火災が延焼拡大した場合、放射熱や煙から身を守るための十分な広さがあるスペース。市は「県大震火災避難対策計画」に基づき、1975年に市内の公園やゴルフ場など6カ所を指定、84年と2013年にそれぞれ1カ所を追加した。

 今回一挙に広域避難場所を増やした背景には、市の環境の変化などがある。

 当初の指定から40年以上が経過し、人口は約1・6倍に増加。かつての農地や空き地には住宅が多く立ち並んだ。また県が09年にまとめた地震被害想定調査では、マグニチュード(M)7・9の関東地震が発生した場合、火災による市内の焼失棟数は最大2万1780棟、市域全体の33%に及ぶとしている。

 こうしたことから、市は昨年度、広域避難場所の再検証と新たな指定候補地の検討を開始。その結果、原則1人当たり2平方メートル以上と定められている避難面積が人口増に伴い、少ない所では1平方メートルほどになっていることが判明した。また避難距離が最大で4キロ離れているケースなどが分かったという。

 そのため、新規指定では▽原則として1人当たり2平方メートル以上の避難面積を確保▽避難距離は2キロ以内▽避難路は河川や踏切を横断しない-などの考え方を組み込んだ。また市内の民間団体や企業と協定を締結。緊急的な避難の必要性が解消されるまで、民間施設を避難場所として無料で使うことを可能とした。

 新たに指定したのは、県立茅ケ崎北陵高や市立浜之郷小学校、柳島スポーツ公園など28施設で、そのうち9施設は松下政経塾、TOTO茅ケ崎工場など民間所有のもの。収容定員も従来の約78万9千人から、約95万3千人に増えた。

 市防災対策課は「民間団体や企業の協力を得られたことは大変大きい。市内全域にバランスよく、広域避難場所を設置することができた」と話した。6月上旬に住民向けの説明会を実施するなど広く周知していくとしている。

新たに茅ケ崎市の広域避難場所の一つに指定された柳島スポーツ公園

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