ザギトワ巡る確執が生んだメドベージェワの「反乱」

By 太田清

平昌冬季五輪後にモスクワで記者会見した(左から)メドベージェワ選手、トゥトベリゼ・コーチ、ザギトワ選手=3月1日(タス=共同)

 平昌冬季五輪フィギュアスケート女子で銀メダルを獲得、アニメ「美少女戦士セーラームーン」が大好きで日本にもファンの多いロシアのエフゲニア・メドベージェワ選手(18)が、同国の女性コーチ、エテリ・トゥトベリゼさんの元を離れることになった。一時は父親の母国であるアルメニア国籍を取得した上で同国代表として競技するとの報道もされたが結局、羽生結弦選手を指導するブライアン・オーサー・コーチに師事することに。今後は同コーチがいるカナダに住みトレーニングを積むという。 

 トゥトベリゼさんは平昌五輪金メダリスト、アリーナ・ザギトワさん(15)やソチ五輪団体金メダリスト、ユリア・リプニツカヤさん(19)ら多くのメダリストを育ててきた名コーチ。メドベージェワ選手がトゥトベリゼさんとの関係を解消するとの臆測は平昌五輪終了後たびたび流れ、2人はこれを否定してきたものの最終的に、メドベージェワ選手はロシアのコーチの元を離れることになった。 

 トゥトベリゼさんはロシアのテレビ第1チャンネルへのインタビューで、4月中旬からメドベージェワ選手に「ショートメッセージを送っても電話をしても返事がない」状況となったことを明らかにした。その後、関係解消の話はテレビ報道で知ることになったという。また、五輪での競技終了直後、メドベージェワ選手が「本当にアリーナ(ザギトワ)をもう1年、ジュニアにとどめておくことはできなかったの」と、「全く子供じみた」質問をしてきたエピソードも明らかにした。 

 ザギトワ選手はジュニア世界選手権で優勝するなどジュニアで活躍。五輪前年の7月1日までに15歳に達していることが五輪出場の条件となっていたが、5月に15歳となったためぎりぎりこれをクリア。メドベージェワ選手の質問は、最大のライバルであるザギトワ選手をジュニアに残しておけば、自分が金メダルを取れたことを訴えたかったものとみられる。 

 これに対し、トゥトベリゼさんは「ジェーニャ(メドベージェワ選手の愛称)、何を言っているの? 皆に同じチャンスを与えなきゃいけないのよ。誰かをジュニアにとどめておく権利なんてないの」とたしなめたという。メドベージェワ選手は世界選手権、欧州選手権で2連覇するなど、ザギトワ選手がシニアにデビューするまで2シーズンにわたって負けのない「無敵」の選手だった。 

 一方、浅田真央選手など多くの優秀な選手を育成したロシアの名コーチ、タチアナ・タラソワさんはロシア通信に対し「全幅の信頼を寄せられてきたコーチが、どんな時でもこんなことを言ってはいけない。ジェーニャを裏切り者呼ばわりしてはいけない」と、トゥトベリゼさんを批判した。

 トゥトベリゼさんの元では、世界ジュニア選手権で史上初めて2種類の4回転ジャンプに成功して初優勝したアレクサンドラ・トルソワ選手(13)ら若手の新星が育っており、こうしたことも「ベテラン」のメドベージェワ選手による関係解消の要因となったとの指摘もある。 

 ロシアのニュースサイト「ガゼータ・ルー」によると7日、モスクワのクレムリンで行われたプーチン大統領の就任式にはトゥトベリゼさんとザギトワ選手は出席するが、メドベージェワ選手の予定はなかったという。 (共同通信=太田清)

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