【MLB】大谷の3勝目、米専門家はどう見た? ハイレベルな変化球の回転数と被打率

エンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

地元テレビ局の解説者が絶賛した変化球「なぜ打者にとって困難なのか」

 エンゼルスの大谷翔平投手は6日(日本時間7日)の敵地マリナーズ戦で6回0/3を6安打2失点6奪三振と好投し、今季3勝目(1敗)を挙げた。開幕後は初めてコンビを組んだレネ・リベラ捕手の好リードもあり、カーブを有効に使ってマリナーズ打線を翻弄。これまで絶大な威力を発揮してきたスプリットだけでなく、日本時代に打者を圧倒していたスライダーも決め球として威力を発揮した。

 メジャーの打者に新しい“引き出し”を見せ、その底知れぬ能力をあらためて証明する形となった今季5度目の先発登板を米国の専門家はどう見たのか。地元テレビの中継では、最速165キロを誇る豪腕の変化球を絶賛していた。

 まずは、2点リードの2回に先頭の右打ちの主砲ネルソン・クルーズを三振に斬った場面。初球はスライダーで見逃し、2球目は97マイル(約156キロ)の直球でファウルと2球で追い込み、最後は88マイル(約142キロ)の外角低めへのスプリットで空振り三振に仕留めた。

 アナハイム向けに試合を中継していた「FOXスポーツ・ウェスト」では、1984年から1997年にかけてロイヤルズとエンゼルスでメジャー通算132勝を挙げた右腕マーク・グビザ氏が、解説者としてこの投球を称えた。

「変化球に関する数値を改めて見てみると、なぜ打者にとって彼の変化球は(対応するのが)困難なのか、そして、なぜ彼らは彼の初球の真っすぐを積極的に狙っていくのかがわかります。(試合前の時点で)変化球の被打率は.049とメジャーでトップとなっているのです。そして、彼の変化球による空振り奪取率は46.2%でメジャー全体で10番目の数字です。これはショウヘイにとっては嬉しい限りです。直球で手っ取り早くアウトを獲れるのですから」

 メジャーの打者にとってあまりにも厄介なのは、大谷の変化球だと指摘。被打率がリーグトップだという事実がそれを物語っているという。

ハニガーを空振り三振に仕留めてスプリットには絶句「なんてえげつないんだ…」

 この試合ではまさに、その変化球が威力を発揮。しかも、開幕から絶大な威力を発揮していたスプリットではなく、スライダーとカーブが効果的だった。グビザ氏はその後、初回に同じ右打者のジーン・セグラから外角低めへの82マイル(約132キロ)のスライダーで空振り三振を奪った場面と合わせて、大谷の決め球の素晴らしさを力説している。

「彼の変化球を見てみましょう。圧倒的なスライダーです。ストライクゾーンに来るように見えますが、セグラは捉えることができませんでした。どれだけブレーキが掛かっているのでしょうか。そして、このスプリットです。クルーズ目がけてストンと落下しています。82マイル(約132キロ)のスライダー。88マイル(約142キロ)のスプリット。彼の変化球はとても有効です。直球は先ほどのシーガーのように微かに対応できるようですが、変化球は事実上、バットに当てることは不可能です」

 2回1死からカイル・シーガーに98マイル(約158キロ)の直球をセンター前に運ばれ、初ヒットを許した大谷だったが、スプリットとスライダーでは主力打者を圧倒していた。グビザ氏は、シーガーに続く6番打者のハニガーを低めへの88マイル(約142キロ)のスプリットで3球三振に仕留めたシーンでは「なんてえげつないスプリットだ……」と“絶句”している。

 さらに、3回先頭のギャメルをスライダーで空振り三振に仕留めた場面では、その回転数に注目が集まっている。ここでは、カウント1-1から左打者のギャメルに内角低めのスライダーを投じてファウルで追い込むと、次も膝下へのスライダーを投じて空振り。グビザ氏は3球目のスライダーについて「とても素晴らしいスライダーですね。そして素晴らしいコースです。回転数も非常に優秀でした。2316rpm(1分間)です」と称賛。さらに、空振りを奪うと「全ての球種において、投球フォームにバランスを保てています。回転数が2483rpmのスライダーでした」と、よりスピンの利いたボールであったことを伝えた。

伝説のクローザーを彷彿とさせる大谷の投球「思い出させるのはガニエ」

 この日、投球を組み立てる上でプラスに作用したカーブも、その大きな落差が話題となった。時計の数字の位置を示す「12-6」という言葉は、メジャーでは縦に大きく変化するカーブを表現する言葉としてよく使われるが、グビザ氏も大谷のボールを高く評価。4回2死走者なしでシーガーを迎えた場面、大谷はカウント1-1から77マイル(約124キロ)のカーブで空振りを奪ったが、グビザ氏は「77マイルのカーブが続きます。時計の針で言うところの、12時から6時のカーブです」と話し、大谷の1つ1つのボールの質の高さを絶賛した。

「86マイル(約138キロ)のスプリット。98マイル(約158キロ)の直球。77マイル(約124キロ)のカーブ。90マイル(約145キロ)台、80マイル(約129キロ)台、70マイル(約113キロ)台というように、スピードに変化をうまくつけながらプレーしていた投手で他に思い出せるのは抑えのエリック・ガニエですね。彼の場合は1イニングだけでしたが」

 2003年にドジャースで77試合登板、2勝3敗でリーグ最多55セーブ、防御率1.20という圧巻の成績を残し、クローザーとしては異例のサイ・ヤング賞に輝いたガニエの名前を出し、大谷の投球を高く評価した。

 大谷はこの試合、7回に突如制球を乱し、ヒーリーに2ランを浴びて2失点で降板した。しかし、チームを勝ち越しに導く貴重な白星をマーク。メジャーでは、直球とスプリットのイメージが先行していたが、スライダーも一級品であることを見せつけ、緩急をつけるカーブも警戒する必要があることを印象づけた。

 カード直前にマリナーズの会長付特別補佐に就任し、直接対決は叶わなかったイチロー外野手は3連戦終了後、テレビ観戦だったことを前提にしつつ、「ちゃんとしたいいピッチャーだというのは分かるし、ちゃんとしたいいバッターというのはこの3日間、それぞれ1日ずつだったけど(分かった)ね。なかなか、欠点が見つけづらいかなぁ」と話した。メジャーの各球団は「欠点」を見つけようと必死に分析しているはずだが、今のところ大谷が二刀流として確かな結果を残している。

(Full-Count編集部)

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