阿蘇・内牧温泉、科学が救った 熊本地震でストップ「井戸破損が原因」

©株式会社熊本日日新聞社

新たに掘削した温泉の井戸を前に、笑顔を見せる阿蘇温泉観光旅館協同組合の稲吉淳一理事長。約7メートル後ろには、熊本地震で使えなくなった井戸がある=阿蘇市内牧

 観光資源を失いかねない非常事態を救ったのは科学の力-。熊本地震後に温泉が止まる施設が相次いだ阿蘇・内牧温泉で、泉源に異常はなく、くみ上げる井戸の破損が原因でゆう出が止まったことを九州大の研究者らが突き止め、温泉の再掘削へと導いた。阿蘇温泉観光旅館協同組合は「明治の開湯以来の危機を、科学の力で救ってもらった」と感謝している。

 研究者は、九州大大学院工学研究院の辻健教授(38)=物理探査学=を中心とするグループ。辻教授は、石油やガス、レアアース(希土類)など資源探査の第一人者で、地震や火山噴火時の地中観測など地下構造の探査と解明を幅広く手掛けている。

 熊本地震では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の衛星「だいち2号」の観測データを基に、内牧温泉を中心とする直径2キロの地域が地滑り的に動いたという特異な現象に着目。この一帯の調査を進めてきた。

 辻教授によると、地域の南東部分の地表に幅1メートル超の亀裂があり、反対側の北西部分には土管を押しつぶした圧縮の痕跡を確認。枯れた井戸を調べると、すべて深さ50メートル付近が変形していた。さらに地層の調査では、深さ約50メートルの泥と小石の層が地震で液状化したことで、地表部分が北西方向に1メートル水平にずれるという「世界的にも珍しい現象」(辻教授)が発生したことを突き止めた。

 こうした結果を基に、辻教授らは温泉が止まったのは、地滑り的な現象によって地下50メートル付近の井戸が壊れたことが原因と断定。地下深くにある泉源には異常がないとみて、現状の井戸近くでの再掘削を進言した。

 同組合によると、一時、地域の19軒すべての施設で温泉のゆう出が停止。「温泉掘削には100メートルで1千万円以上かかる。アドバイスがなければ再掘削に踏み切れなかった」と阿蘇プラザホテル社長の稲吉淳一理事長は振り返る。研究結果を裏付けにグループ補助金申請もスムーズに進み、現在では再掘削を試みたすべての施設で温泉が復旧したという。

 「地下の状態が明らかになり、内牧温泉の復活に貢献できて良かった」と辻教授。今後も組合と連携し、限りある資源を永続的に利用するために必要な温泉の活用法について、研究を進めていくという。(文化生活部 松本敦)

(2018年5月9日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

以下の「同意する」ボタンを押すことで、またはこのページ内のリンクをクリックすることで、ノアドット株式会社が別途「プライバシーポリシー」に定める「アクセスデータ」を取得し、利用することを含む「nor.利用規約」に同意することになります。お客様は、プライバシーポリシー記載の所定の手続きにより、アクセスデータを管理できます。