地名とズレてる駅・路線

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所在地が書かれた厚木駅の駅名標

 「東京ディズニーランドがあるのは東京ではなく千葉」というのは有名な話だが、他にも「東京」と名乗りながら、実は千葉県にあるという施設はいくつかある。実は、鉄道にも同じような境遇の駅や路線がある。そんな「鉄道界のディズニーランド状態」を紹介したい。

 その代表格が、山手線など多くの路線が乗り入れる品川駅だ。てっきり品川区にあるかと思いきや、駅の所在地は港区になっている。同じ山手線の目黒駅も同様で、駅があるのは品川区。つまり「目黒駅は品川区なのに品川駅は港区」という不思議な状態になっている。

 このようになった理由については、品川駅があった場所がかつて「品川県」だったから、あるいは東海道五十三次のひとつの品川宿に近かったから、など諸説あるようだが、はっきりしたことはわかっていない。

 市の名前を名乗りながらその市に所在していない駅もある。小田急線とJR相模線の乗換駅になっている厚木駅だ。例によって駅があるのは厚木市ではなく隣の海老名市。ホームにある駅名看板は、小田急では珍しく所在地が書かれ「厚木駅(神奈川県海老名市)」となっている。

 厚木市の中心地に近いのは隣の本厚木駅で、ここは間違いなく厚木市に設置されている。ちなみに「厚木」と聞いて米軍や海上自衛隊の「厚木基地(飛行場)」が思い浮かぶが、こちらも厚木市にはなく周辺の大和市などに所在している。

 同じようなことは路線名にも見られる。まずは栃木県と茨城県を結ぶJR水戸線だ。県庁所在地の水戸市の名前を冠するが、水戸駅はおろか水戸市にすら繋がっていない。栃木県の小山駅を出発すると東へ進み県を越え、終着は水戸市の南側に位置する茨城県笠間市の友部駅。時間帯にもよるが友部駅で常磐線へ乗り換えないと水戸駅に行けなくなっている。

 その上を行くのが関西にあるJR奈良線だ。おおむね南北に走る路線で、北端の駅は京都駅(京都市)。そこから奈良方面に南下し、京都府木津川市の木津駅が終着のため、同線は奈良県に到達する前に終わってしまう。つまり奈良線は、奈良市はおろか、奈良県にすら入らない路線なのだ。

 同線には奈良行きの列車が多数存在するが、厳密には木津駅から関西本線に乗り入れ、2つ先の奈良駅まで向かう。「京都から奈良の方に向かっていく路線」という意味では合っているのだが…。

奈良線では奈良に行けないが…(撮影:京都駅)

 このように、地名を冠しながらも実際の所在地とズレている駅や路線を紹介した。さまざまな理由でこのような現象が起きるのだが、会社・路線の再編によるものや、駅設置後に新しい名前の自治体が登場したためといったケースが多い。

 そんな経緯を調べていると、その土地の歴史や街の変遷が見えてきて、何気なく使っていた駅や路線に新しい気づきがあり、おもしろい。

 ☆加志村拓(かしむら・ひろし)共同通信社記者。1992年京都府舞鶴市出身。実家の舞鶴市は、東舞鶴駅と西舞鶴駅が存在しつつも、舞鶴駅は存在しないイレギュラーなことになっています。