JFEスチール独自開発の溶接技術、熊本城の天守閣復旧に一役

 JFEスチールは9日、熊本地震で破損した熊本城(熊本市)の天守閣復旧工事で、主要構造物となる柱材の製作に独自の溶接技術が適用されたと発表した。天守閣の設計に合わせた細い柱を製作する上で、通常の手法では両立が難しい高い溶接品質と施工性を同時に実現できる利点が評価され、この柱に用いる厚板とともに採用を受けた。

 適用されたのは昨年開発した高施工性の炭酸ガスアーク溶接技術「超狭開先J―STAR溶接」。天守閣の大天守の6階部分に使う溶接組立箱形断面柱の製作に用いられた。

 この柱は4枚の厚板を箱型にし角部を溶接して製造する。熊本県宇城市の鉄骨ファブ永井製作所がJFEの同溶接技術を用いて昨年7月に製作し、同8月に据え付けられた。

 今回は設計上、細い柱とするために板厚25ミリの薄手の厚板を用いる必要があり、同様の溶接で一般的に使われるサブマージアーク溶接法では溶接時の変形が大きくなる課題があった。変形を抑えるため炭酸ガスアーク溶接が用いられる場合もあるが、施工効率が低下してしまうデメリットがある。採用されたJFEの溶接技術は溶接変形を抑えつつ高い施工性も同時に実現できることから今回の採用に結び付いた。

 熊本城の天守閣復旧整備事業は2021年3月まで行われる予定でJFEの鋼材は約50トン使われる。

© 株式会社鉄鋼新聞社