【大手管工機材商社の業務提携、M&Aが加速】拠点網、商材・サービスを拡充 小の「後継者・商権維持問題」も遠因に

 大手管工機材商社による同業者・異業者との業務提携やM&Aの動きが加速している。リフォーム市場などで増加傾向にある商材・サービスのワンストップニーズに対応するため、拠点網の拡大や扱いアイテム・サービスの拡充を狙うケースが多い。一方で、中小オーナー系管材商の後継者や商権維持の問題なども、積極的なM&Aの動きの要因になっている。

 管工機材の主要マーケットである住宅、非住宅、公共工事、リフォームなどの分野は、今後も総じて堅調な需要が見込まれている。非住宅分野では大都市圏を中心とした設備投資案件、公共工事は復興関連、地震対策などがそれぞれ増加を続ける見通し。リフォーム分野では、マーケット全体が新築中心から既存住宅の品質・性能を高めて中古住宅流通で循環利用する「ストック型住宅市場」への転換が顕著に。国土交通省では、2020年までに中古住宅・リフォーム市場規模を現行比倍増の20兆円にまで高める方針を打ち出している。

 ただその一方で現場の人手不足、物件の工期遅れなどが顕在化。管材商にとってはトラックやドライバー、配送ルートの確保もかなり難しくなってきている。

 今後見込まれる各分野の堅調な需要に対応するため、大手の管材商にとっては(1)取り扱いアイテムの拡充(2)拠点網の拡大(3)人手不足に対応するためのワンストップ供給体制、工事業などサービスメニューの拡充―などが課題として挙げられる。こうした課題への対応が、大手管材商による業務提携やM&Aの動きを急増させている。

 直近のM&Aの傾向を見ると、(1)拠点網拡大型(2)商材・サービス拡充型(3)中小管材商社救済型―などに大別される。

 直近1~2年で最もM&Aを実施しているのがイシグロ(本社・東京都中央区、社長・石黒克司氏)。17年4月のサンエス管材、今年に入ってからの新町管材、三州機工商会、第一鋼管の子会社化は、関西圏、九州圏での営業強化を狙ったものだ。12年5月の新興金属子会社化はステンレス製品事業の拡大が目的。13年1月には中部地区におけるプラント分野の商権拡大を図るため、五光商會(現五光山彦)を子会社化している。

 新規分野と既存事業とのシナジーを狙ったM&Aの案件も多い。オーテック(本社・東京都江東区、社長・市原伸一氏)は16年8月にフルノ電気興業を子会社化。北海道地域での工事受注確保や有資格者の人材活用などを推進している。橋本総業(本社・東京都中央区、社長・橋本政昭氏)は子会社化した大和と森鋼管(両社合併で大和が存続会社)で、関西圏でのサブコン向け配管資機材と鋼管などの販売力を強化する。

 渡辺パイプ(本社・東京都中央区、社長・渡辺元氏)は営業面での空白地域を埋めるため、M&Aによって子会社した管材商が全国各地に点在する。平和テクノ、大成商会、名興電機、クサノ電材などは、電材事業強化を狙ったもの。同社は住宅設備機器と合わせ電材を売り上げ強化品目の一つに挙げており、現中計最終年度(20年3月期)にグループ売上高3千億円を目指している。

 大手管材商がM&Aにより子会社化している管材商は、年商10億円前後の中小オーナー系管材商が多い。大手筋は、後継者問題を抱えながらも地場で優良顧客を持つ同業オーナー系を囲い込む形で、商権拡大を図っている。一方、M&Aではなく「業務提携」というソフトアライアンスの事例も出てきた。

 冨士機材(本社・東京都千代田区、社長・千賀恒宏氏)とタカラ通商(同・大阪市中央区、同・川西雅裕氏)は今年2月に業務提携契約を締結した。(1)営業協力・情報共有(2)人材交流・育成(3)物流・営業拠点の相互活用(4)エンジニア機能共有―などを推進。関東圏の冨士機材と関西圏のタカラ通商という主要マーケットが異なる両社でシナジーを追求する。

 商材や拠点網で業容拡大を図りたい大手と後継者や今後の業態に課題を残す中小オーナー系双方の思惑が一致すれば、今後もこうしたM&A、業務提携の動きはしばらく続くとみられる。一方でこうした動きが継続、拡大すれば、大手管材商にとっては本体の既存業務と子会社間、もしくは子会社同士の事業整理のほか、派遣する人員確保などがこれまで以上に大きな課題となってこよう。(後藤 隆博)

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