UACJ、20年度の経常益5割増目指す 中期計画、海外早期収益化へ

車材中心に市場深掘り

 UACJは9日、20年度までの中期経営計画(第2次)を発表した。タイや米国で実行してきた大型投資の早期収益化に取り組む。一方で軽量化需要が期待される自動車市場では一段の事業拡大も検討する。資本効率の改善を進め、最終年度に経常利益を5割増の300億円まで高める。

 新中期計画の数値目標を売上高8050億円、経常利益300億円、ROIC(投下資本利益率)6・4%とした。経常利益は原価償却費の増加などを予想しているが、北米事業で55億円、タイ事業で45億円、コストダウンで40億円の増益を予想する。

 UACJは前中期経営計画で、アルミ板を中心に国内生産体制の最適化に取り組むなど、旧古河スカイと旧住友軽金属工業の統合によるシナジーを追求してきた。またタイ(UATH)と米国(TAA)のアルミ板圧延工場で大規模な増産投資に踏み切ったほか、成長分野の自動車需要を捕捉するため、米国でパネル材の合弁仕上げ拠点(CUA)新設と構造部材会社(UWH)の買収も進めた。これらの施策で規模を広げたものの、投資が先行して目標利益を実現できなかったため、新中計ではこれら案件の早期収益化を最優先に掲げた。

 最重要課題のUATHは、品質向上と採算性重視の販路拡大で、19年度黒字化を目指す。米国では、量産本格化に時間がかかっているCUAの早期立ち上げと生産性の改善を目指す。TAAでも投資回収に向け、20年度に販売量を年40万トンまで引き上げる。

 新規の事業投資では、すでに決定済みの700億円を除き、3年間でさらに740億円を割り当て、自動車材など成長市場での事業拡大を狙う。案件としては、CUAの仕上げライン増設などを視野に入れている。

 アルミ板以外の分野については押出、箔、鋳鍛などで自動車の軽量化やEV化といったテーマに取り組む。また新合金開発や自動車材リサイクルシステムの構築といったR&Dの強化も目指す。

 UACJは新中計を〝利益の大幅拡大〟の通過点と位置付けている。22年度を最終年とする長期的なイメージについて、売上高9050億円、経常利益450億円、ROIC8%以上と定めた。

取締役報酬制度を見直し、業績連動方式を導入

 UACJは9日、取締役の報酬制度を見直すと発表した。基本報酬に加えて、短期業績連動報酬と中長期業績連動報酬を加算する制度を導入する。

 短期業績連動報酬は評価機関を事業年度単位とし、(1)全社業績評価による部分(2)部門業績評価による部分(3)個人評価による部分―で構成する。中長期業績連動報酬は、普通株式の交付と金銭を支給するパフォーマンス・シェア・ユニット制度とし、役職に関わらず全社業績評価のみで行う。

 業績評価期間は3年間で、割当頻度は3年に1度。3事業年度総額で18万株を上限とし、交付時の株価を乗じた額以内とする。

配当方針を一部変更

 UACJは9日、20年度までの中期経営計画期間中は、通期の利益に対して連結配当性向の目安を20~30%とすること、通期利益に応じた機動的な株主還元の観点から期末配当に一本化すると発表した。長期的には総還元性向の目標を30%以上とする。なお、19年3月期配当予想は年60円。

© 株式会社鉄鋼新聞社