「皆が当然と思っている」トランプ氏のノーベル賞

By 太田清

 

9日、ホワイトハウスで閣議を開くトランプ大統領(ロイター=共同)

 史上初の米朝首脳会談前に、早くもトランプ大統領にノーベル平和賞を贈るべきとの声が高まっている。与党共和党の下院議員と下院準議員計18人が2日、トランプ氏は平和賞候補だとして、選考主体のノルウェーのノーベル賞委員会に推薦状を送った。北朝鮮を交渉のテーブルに着かせ、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験中止を決めたことへの貢献を評価したとしている。4月28日には中西部ミシガン州で開いた支持者集会で、トランプ氏は支持者から平和賞受賞に値するとして「ノーベル、ノーベル」との連呼も受けた。 

 米メディアによると、トランプ氏自身も9日、ホワイトハウスでの閣議で記者団からこれまでの実績が「平和賞に値するか」と聞かれ、「皆がそう思っているが、私は言わないよ」とした上で、「私が欲しい唯一の賞は、世界(平和)のための勝利だ」と答えた。 

 まだ、金正恩朝鮮労働党委員長との会談も行われてもいないのにさすがに気が早いと思うが、トランプ氏への平和賞を推しているのは国内の支持者や与党議員だけではない。韓国の文在寅大統領は4月27日の南北首脳会談後に「トランプ大統領は平和賞を受賞すべきだ」と発言。英国のジョンソン外相も「もしトランプ氏が北朝鮮とイランの問題を解決できれば、何もしないのに受賞したオバマ前米大統領より平和賞にふさわしい」と評価。しかし、この発言はトランプ氏が8日、米国のイラン核合意離脱を表明する直前に行われたもので、トランプ氏に核合意離脱を思いとどまらすための「おべっか」(英BBC放送)とも受け止められているが。 

 しかし、実際問題、どのように北朝鮮の核・ミサイル問題が進展しようが、トランプ氏は今年の平和賞候補にはなれない。ワシントン・ポスト紙(電子版)によると、推薦文は今年の1月31日までに送付されなければいけないが、その時点では米朝首脳会談など両国の融和に向けた動きは全くなく、推薦した団体はいなかっただろうからだ。 

 ちなみに、これまでに平和賞を受賞した米国の大統領はオバマ氏を含め計4人。トランプ氏が受賞すれば5人目の大統領となる。 (共同通信=太田清)

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